英歌手ポール・マッカートニー(72)が28日、日本ツアー最終公演(日刊スポーツ新聞社など後援)を東京・日本武道館で行った。1966年(昭41)、日本中が熱狂したザ・ビートルズの初来日公演から49年。伝説の地に戻ったポールを、日本のファンはお祭り騒ぎで迎えた。

 開演前、ウエーブやポールを待つ手拍子が何度も起きた。予定時間から1時間半近く過ぎた午後7時55分。ポールは両手でガッツポーズをしながら登場した。「コンバンハ、トーキョー。ブドウカンヘヨウコソ」。その後も「ヒサシブリ、ブドウカン」「ナツカシイ」と日本語を繰り出した。

 昨年5月、武道館も含めて予定された来日公演は体調不良で中止に。結果、ポールにとって49年ぶり武道館帰還となったが、開演前からお祭りムードに包まれた。公演グッズを求める列に並んだ人は、午後5時半現在で約5000人。若干数だけ発売された当日券には500人が並んだ。約1万枚のチケットは完売。チケットを入手できず公演中の“音漏れ”を聴こうと、会場外にも約1000人のファンが集まった。

 警備スタッフは約300人。平均的な武道館公演の警備スタッフの約1・5倍にとどまった。ザ・ビートルズ公演では、場内に機動隊が入ったが、この日の警備スタッフは主催者側の手配によるもの。開演すると通路に立っていたスタッフはしゃがむなど、お祭りムードに配慮した。

 ポールは午後4時半ごろ会場入り。車の窓から身を乗り出し、右手を振って、沿道のファンを喜ばせた。ザ・ビートルズ公演の11曲に対し、アンコールを含め28曲を披露。当時と同じ曲は、「イエスタデイ」「ペイパーバック・ライター」の2曲のみだった。18曲目「アナザー・ガール」は、公演で世界初披露。プレゼントも忘れなかった。

 ファンもお祭りムードを演出した。本編最後の「ヘイ・ジュード」。主催者側が配布したリストバンド形ライトで、アリーナは日の丸、正面スタンドは英国旗に染められた。ポールは頭を抱えて大喜びした。

 途中、ポールは会場を見渡した。あの日、警備上の問題で設置されなかったアリーナ席もちゃんとある。アンコールでは、ファンと「ブ・ド・ウ・カ・ン」コールを行うこと6回。49年前はわずか30分の公演だったが、今回は約2時間。ファンと一緒に楽しんだ。【近藤由美子】

<ビートルズ来日公演>

 日刊スポーツが、66年2月16日付で「東芝音楽工業がビートルズ招聘(しょうへい)に乗り出した」とスクープ。

 ◆6月29日 午前3時39分、メンバーが羽田空港着の日航機で初来日。法被を着た4人が手を振りながらタラップを下りる。

 ◆6月30日 午後4時、日本武道館開場(入場料は2100円、1800円、1500円)。外には警官、機動隊1700人、装甲車40台、パトカーなど70台が警備。会場内は1万人の観客に対して、3000人の警備。同6時40分にE・H・エリック司会で前座の演奏開始。尾藤イサオ、内田裕也、ジャッキー吉川とブルーコメッツ&ブルージーンズ、ザ・ドリフターズらが出演。同7時35分、コンサート開始。

 ◆7月1、2日 昼夜2回公演。翌3日に離日。