河瀬直美監督(46)が、5月11日からフランスで開幕する世界3大映画祭の1つ、第69回カンヌ映画祭の短編コンペティション部門と、学生作品を対象としたシネフォンダシオン部門の審査委員長に就任することが15日、同映画祭事務局から発表された。

 日本人が審査委員長に就任するのは初めて。河瀬監督は就任にあたりコメントを発表した。

 「『未来の才能を見つける手助けをしてください。』とのお誘いをカンヌ映画祭の名誉会長である、ジルジャコブさんからいただきました。そのような立場に迎えていただけることに恥じぬよう、わたし自身も創作の原点に立ち返り、真摯(しんし)に映画芸術と向き合う時間を持つ覚悟です。短い時間の中にどれほどの物語を体験できるのかという意味において、非常に難しく、同時にまだ見えない可能性を多々秘めている短編作品。そして、学生時代に創作された作品の中から、原石のように秘めた輝きを発見すること。これからの映画界への希望を胸に、無垢なまなざしで向き合いたいと思います」(原文のまま)

 カンヌ映画祭短編コンペティション部門は11年に作られた部門で、短編パルムドールを選出する。またシネフォンダシオン部門は98年に作られた部門で、学生の作品が対象。世界の若い監督たちの登竜門となっており、日本人では14年に平柳敦子監督が「Oh Lucy!」が2位に選ばれたのが唯一の受賞だ。

 河瀬監督は、97年「萌(もえ)の朱雀(すざく)」で新人監督賞「カメラドール」を受賞。最高賞パルムドールを争うコンペティション部門には、03年「沙羅双樹」、07年「殯(もがり)の森」、11年「朱花(はねず)の月」、14年「2つ目の窓」を出品し、「殯の森」で審査員特別大賞を受賞。昨年は「あん」が、ある視点部門のオープニング作品として上映されるなど“カンヌの申し子”として知られる。カンヌ映画祭サイドも、映画祭が見つけた世界の才能として、河瀬監督を高く評価しており、13年にはコンペティション部門の審査員も務めた。

 最新作の「あん」は、16日にブルーレイ&DVDが発売される。また地元の奈良から世界に向けて活動を続けており、エグゼクティブディレクターを務め、今年で4回目となる「なら国際映画祭」が9月17日に開幕する。