シンセサイザー音楽の先駆けとして世界的に活躍した作曲家でシンセサイザー奏者の冨田勲さんが5日午後2時51分、慢性心不全のため都内の病院で死去した。84歳だった。同日昼ごろに自宅で倒れ、搬送先の病院で家族にみとられ息を引き取った。11月に上演予定だった交響曲「ドクター・コッペリウス」の創作に直前まで取り組んでいた。通夜や葬儀・告別式は7、8日に親族のみで行った。後日、お別れの会が開催される予定。

 長男で慶大教授の冨田勝氏によると、倒れる1時間前まで同作の打ち合わせをしており、「11月までは死ねなくなっちゃったよ」と冗談を言って笑わせていたという。もともと低血圧で時々立ちくらみのような症状もあったといい、勝氏は「今回も徐々に意識が薄れていったと思われますので、本人はまた意識が戻るつもりでいると思います」としており、「父の作品の志はなくなることはありません。これからも冨田勲をどうぞよろしくお願いいたします」とコメントした。

 冨田さんは慶大在学中に作曲家としてキャリアをスタート。NHK大河ドラマの第1作「花の生涯」をはじめ「天と地と」「勝海舟」「新平家物語」などの大河ドラマの音楽や「新日本紀行」のテーマ曲、映画「たそがれ清兵衛」など山田洋次監督作品や、手塚治虫アニメ「ジャングル大帝」「リボンの騎士」の音楽も手掛けた。70年代からシンセサイザーをいち早く導入。74年のアルバム「月の光」が日本人で初めてグラミー賞にノミネートされるなど世界的に活躍した。最近は12年に初音ミクとコラボレーションした公演「イーハトーヴ交響曲」が話題になった。

 ◆冨田勲(とみた・いさお)1932年(昭7)4月22日、東京都生まれ。慶大在学中に手掛けた合唱曲がコンクール1位となり作曲家を志す。63年「花の生涯」をはじめNHK大河ドラマ5作の音楽を担当。シンセサイザーを導入した74年アルバム「月の光」は米ビルボード・クラシカルチャート1位、グラミー賞にも4部門でノミネートされた。以降「展覧会の絵」「火の鳥」「惑星」などのアルバムが世界的にヒット。山田洋次監督作品は「学校」シリーズや日本アカデミー賞最優秀音楽賞受賞の「たそがれ清兵衛」など。