新しいことをすれば、批判が付いて回るのは、世の常。とはいえ、昨年大みそかのNHK紅白歌合戦の演出についてひとこと、言いたい。演出に凝りすぎて、肝心のファンや視聴者の目線が置き去りになっていたのではないでしょうか。

 例を挙げます。

 三代目J Soul Brothersが「Welcome to TOKYO」を歌唱した際、LED衣装を着た100人のパフォーマーが登場しました。曲に合わせ、さまざまな色に変わる衣装が舞台を彩りました。その様子を上空のカメラで俯瞰(ふかん)で見せる映像は壮大でした。一方でメンバーの表情が分かるようなアップ映像が少なすぎた。「絵はきれいだったけど、もっと歌っている人の表情や迫力あるパフォーマンスを見たかったのに、すごく残念だった」。複数の三代目JSBファンから聞いた言葉です。

 天童よしみの「あんたの花道」の歌唱では、女優でフィギュアスケート選手の本田望結が華麗なダンスを披露しました。HKT48メンバーの田中美久と矢吹奈子も踊りに加わりました。紅白は、演歌歌手の歌唱になると、視聴率が落ちる。業界でよく言われていることです。なので、それを防ごうと「歌唱+派手な演出」の合わせ技で見せようとしたのでしょうか。望結ちゃんばかりが映り、肝心の天童の出番が少なすぎた。意地悪な言い方をすれば、天童の歌がBGMのように流れているようなにさえ感じました。

 演出は、演出として存分に楽しませてもらいたい。しかし、歌番組である以上、歌手と曲をもっと大事に扱うべきではないでしょうか。

 「歌の力」を信じる1人として、演出だけがひとり歩きをしているような気がした紅白でした。