市川染五郎(44)が演出・主演した「氷艶」が思いのほか、面白かった。東京・代々木第1体育館で行われたが、初日はほぼ満員だった。

 染五郎は昨年、ショービジネスの本場である米ラスベガスで新作歌舞伎「獅子王」を上演し、本水での立ち回り、下駄タップなどを見せて、観客を大喜びさせた。そして、今回の「氷艶」は10年ほど前に「ディズニー・オン・アイス」を見た時に、これは歌舞伎でもできると思ったという。そして、フィギュアスケートと歌舞伎がコラボレーションした「氷艶」が実現した。

 上演時間は休憩をはさんで2時間45分ほどだが、いろいろな趣向を盛り込んで、まったくあきることがなかった。美しいイナバウワーを見せた荒川静香が20メートルの高さの宙乗りに挑んだり、義経役の高橋大輔が高速で滑りながら、派手な立ち回りを見せたり、鈴木明子、織田信成、村上佳菜子、浅田舞らも役に成りきりながら、華麗なスケーティングで魅了した。染五郎も、かつて木村拓哉と共演したドラマ「プライド」でアイスホッケー選手を演じたキャリアを生かして、スケートで「六方」を見せたりと、それぞれが日ごろとは違うことに果敢に挑んでいた。

 「歌舞伎俳優がやれば、それは歌舞伎になる」とは、歌舞伎界の至言だが、「氷艶」のかぶきぶりは際立っていた。染五郎は来年、大名跡「松本幸四郎」を襲名するが、幸四郎となっても、やりたいと思ったことはやり抜く、かぶきぶりを発揮してほしい。