TBS系日曜劇場「陸王」で正岡あけみを演じる阿川佐和子(64)さんにインタビューした。

 インタビューの達人にインタビューするとあって、かなりのドキドキものでした。しかし、実際に会うと、初めて会っているのに、昔からの知り合いのような不思議な空気を感じた。その要因は、あの「笑顔」にあるのかもしれない。実にチャーミングな笑顔でした。あの笑顔が、北野武さんさえもコントロールしているのではないかと感じたのだ。そこに計算はないと思う。あれは阿川さんに持って生まれた才能なのかもしれない。

 結婚生活についての話では、さらにその笑顔がキラキラと輝いたが、実はある質問に地雷が潜んでいた。「結婚して物の見方や考え方は変わりましたか」と質問をすると「ん~」と考えた結果、「そんな簡単に物の見方は変わらないでしょう。変わりますか?」とインタビュアー魂に火を付けてしまったのだ。「ギブアンドテイクなんだから、早く話して」と笑顔で突っ込まれ、気が付けばそこからしばらくは私の身の上話となっていたのだ。

 まさか阿川さんに身の上話をすることになるとは(笑い)。さすが「聞く力」の人でした。インタビューが終わると、「さっきの話も、ちゃんと紙面に書いてね!」と笑いながら私に向かって手を振りながら撮影へと向かったのだ。

 作家でもある阿川さんは「人間の会話って必ずしも『質問&回答』で回っていない」と話していました。「小説のカギカッコも『質問&回答』できちっとするよりも、その関係性が見えるような会話を意識して書いているけど、ドラマは全部カギカッコだからね」。第1話で志賀広太郎演じる番頭役の富島玄三と「このくそじじぃ」「このくそばばぁ」とののしり合うシーンがあった。「本当はすごく下の方で通じあっている部分があって、それぞれの担当分野が違うから『それは言わせてもらうよ』というのが出なきゃいけないと思うんです」という。「『私は中学を卒業してこはぜ屋に来ました。その時、社長は中学生でした。でも同じ年くらいの社長が大きくなって、いろいろ迷いながらやっているのを今度は私が支えます』というシーンが一切無くても、それが出るような役割のあけみをやらなくてはいけないだろうなと。だから本当は好きなのよ、社長のこと。そういう気持ちを持っているあけみを演じられたらいいなと思っています」と熱く語る姿も印象的だった。

 今回の取材で、日曜日の夜が、ますます楽しみになった。