肺がんで闘病中の大林宣彦監督(79)が16日、東京・有楽町スバル座で、新作映画「花筐/HANAGATAMI」の初日舞台あいさつに出席した。

 作家檀一雄さんの短編小説集「花筐」の映画化で、太平洋戦争開戦前夜の少年少女たちの心が揺れ動く様子を描いた青春群像劇。

 大林監督にとって、77年「HOUSE」で商業映画監督デビューする前から脚本を書いていた作品で、念願の映画化。昨年8月の撮影開始直前に、肺がんで余命3カ月の宣告を受けながら完成させた。

 この日はつえをつき、満島真之介(28)の手を借りながらも歩いて登壇した。アニメ監督の高畑勲氏から贈られた花束を手に「アニメ作家(高畑氏)と松竹の山田洋次(監督)と、戦争を知る世代が、知らない世代に伝えようと、仲良く生きております。未来を生きる若い人たちに伝えたい」と語った。

 36歳ながら、17歳の少年を演じた主演の窪塚俊介には「36歳が、この映画の中では17歳。同時に語り部でもある。最後には監督である私自身の役と、何役もやってもらった。この年長の人が17歳の役をやって、それがうまくいった」と感謝した。窪塚が「(年齢を聞かれたら)監督が『18~80歳と答えなさい。役者とはそういうものだ』とおっしゃった」と裏話を明かすと、大林監督は「演じられる年齢で答えなさいということですよね」と続いた。

 イベントではいすに座りながら、登壇した1人1人に感想とアドバイスを送った。満島には「演技をするということは、シナリオに書かれたことの理解を超え、『なぜここにいるのか』と考えること。それを身をもって証明してくれたのが真ちゃんでした」と感謝。大林監督自らの提案で、芸名を本名に変えた矢作穂香(20)には「矢作という名字は呼んでもらえないし、なじみは薄い。君がいい女優に育てば、世界中の人が矢作と呼んでくれる。それが、矢作という家に生まれた君の責務だよ」とエールを送った。

 大林監督は、闘病中とは思えない元気さで、50分にも及ぶ長い舞台あいさつを仕切った。最後は、出演者たちとスクリーンに向けおじぎした。さらに「余命3カ月と言われながら、1年4カ月、生きております。あと30年は生き延びて、映画を作りたいと思います」と次回作以降にも意欲を語り、大きな拍手を受けていた。

 ほか山崎紘菜、門脇麦、常盤貴子、村田雄浩、原雄次郎らが登壇した。