行定勲監督(49)が31日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた映画「リバーズ・エッジ」(行定勲監督、2月16日公開)完成披露試写会で、主演の二階堂ふみ(23)からの熱いリクエストで実写化に踏み切ったと明かした。

 「リバーズ・エッジ」は、1993年(平5)から翌94年まで雑誌「CUTiE」で連載された漫画家・岡崎京子氏原作の同名の漫画を、行定監督が実写化した。生きることや性への悩みなど、爆発寸前の若者たちの日常を描いた。

 行定監督は「伝説的な漫画家の映画…実写化には関わりたくなかった。(原作を知るファンや関係者、世評に)蜂の巣にされる、サンドバッグにされると…二階堂ふみに、ほだされて監督をやった」と実写化への思いを語った。同監督によると、当時20歳だった二階堂から「『リバーズ・エッジ』に興味ないですか?」と聞かれたことが、全ての始まりだったという。「興味あるよ」と答えると「OK? じゃ始めましょう」と、そこから実写化への動きが始まったという。

 二階堂は行定監督の話を受けて、原作との出会いを語った。二階堂は16歳の時に、11年のベネチア国際映画祭コンペティション部門で染谷将太とともにマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞した映画「ヒミズ」のスタッフから借りて原作漫画と出会った。「自分の抱えているものが、作品にあった。その衝撃が強くて、自分の中に傷痕が残った感覚。その半年後に企画が立ち上がり…実は6、7年、時間がかかっている」と実写化が実現できたことを感慨深げに語った。

 行定監督は、原作が連載されてから20年以上たった今、実写化した意味について「僕自身、今、なぜ…と思った」と1度は疑問を感じたと率直に打ち明けた。その上で「よくよく考えると、95年にオウム真理教の地下鉄サリン事件や阪神淡路大震災が起こり、僕らはいろいろな局面を生き抜いた。今も、この世の中がどうなっていくか分からない淵にいる。川の流れは1つの歴史…岸があって少年、少女がたたずんで生きる…そのテーマが出てきた。今の人に有効的に刺さる、普遍的なテーマとして刺さり続ける…今かなと。岡崎京子、すげえやと感じた。それを若い人に知ってもらいたい」と普遍性を持つ作品性が、現代に実写化する意味だと強調した。

 二階堂も「若い人たちが抱えるもの、感じること、生きるということに、10代後半、疑問に思ったり気付き始める頃。監督がおっしゃるとおり普遍的なテーマ。感じていただけたらいい」と若者にメッセージを送った。

 原作は、96年に交通事故に遭い、現在もリハビリを続ける岡崎氏の代表作として知られ、主題歌は、岡崎氏と親交の深い小沢健二(49)が、自身初の映画主題歌となる「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」を書き下ろしたことも話題となっている。

 「リバーズ・エッジ」は、2月15日から開催される第68回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門のオープニング作品に選出されている。二階堂とともに映画祭に参加する吉沢亮(23)は「海外どころか国内もない。映画祭って何するんですか? という感じ。世界3大映画祭で、すごく挑戦的な魂のこもったこの作品で行けるのは光栄」と身を引き締めた。

 二階堂は最後に岡崎氏から託された「みんな見てね!! 岡崎京子」とのメッセージを代読した。

 この日は森川葵(22)、上杉柊平(25)、SUMIRE(22)土居志央梨(25)も登壇した。【村上幸将】