歴代最長8期15年に及び、上方落語協会の会長を務めた6代桂文枝(74)が退き、第7代会長に大御所・笑福亭仁鶴の筆頭弟子、笑福亭仁智(65)が就いた。31日、大阪市内で、2人そろって会見し、今後の落語界について、展望を語った。

 文枝は、厳しい時代の到来を予測した。

 「ひじょうに厳しい時代を迎えると思う。いろんなものがタダで見える。ネットで見える。いろんなテレビがある。大阪万博も来ると思うし、カジノもできたり、いろんな楽しいものがある。その中で、一番シンプルな芸の『落語』に人を集めるのは厳しくなっていくと思う」

 趣味の多様化がさらに広がるゆえ、伝統芸能としての側面もある落語離れを危惧している。とはいえ「本当に厳しくなるかはこれからやってみないと分からないし、それくらいの気持ちを持っておかないといけない」と補足し、厳しい覚悟で進んでいく必要性を説いた。

 協会では無役となる自らについては「これからは若い人と落語会をして、今まで経験したことを伝えていきたい」と、サポート役に徹する覚悟だ。

 そんな文枝の発言を受け、新会長の仁智も、将来への予見を口にした。

 「(文枝前会長の話のように)環境的には厳しいことも考えられる」としながらも「(落語界の)多くの人材が競争する中で、若い『大谷さん』みたいな人が何人か出てくると活性化して、今はネット社会ですから、あっという間に世間が注目していただけるんじゃないか」。米大リーグで活躍するエンゼルスの大谷選手を引き合いに、若手の競争から開ける未来を期待している。

 「それを狙うのではなく、地道に頑張ってみんなでやっていると、そういう人が自然と出てくるんじゃないかな。そういう下地をちゃんとしてあげることが協会の役目」と言い、若手が伸び伸びと活動できるよう、新会長として心を砕く構えを示していた。