「羅生門」「七人の侍」などの名作を手掛け、日本映画を代表する脚本家だった橋本忍(はしもと・しのぶ)さんが19日午前9時26分、肺炎のため東京都世田谷区の自宅で死去した。100歳。兵庫県出身。葬儀・告別式は近親者のみで行う。喪主は長女綾(あや)さん。

 善と悪、愛と憎しみなどの対立概念を巧みに作品に織り込んで人間の本質を探究し、日本映画の黄金時代を支えたシナリオライターだった。

 旧国鉄に勤務し、軍隊を病気で除隊後、伊丹万作監督に師事。黒沢明監督と脚本を共作した1950年の「羅生門」がベネチア国際映画祭金獅子賞などの映画賞を獲得、一躍脚光を浴びた。以後、「生きる」「七人の侍」「隠し砦の三悪人」など黒沢作品の脚本の共同執筆に加わった。

 また「張込み」「砂の器」(いずれも野村芳太郎監督)や「霧の旗」(山田洋次監督)など、松本清張さん原作の脚本も手掛けた。

 主な映画作品に小林正樹監督「切腹」、山本薩夫監督「白い巨塔」、岡本喜八監督「日本のいちばん長い日」、森谷司郎監督「日本沈没」「八甲田山」など。

 脚本・監督作に、フランキー堺さんが主演した「私は貝になりたい」などがある。

 68~70年に日本シナリオ作家協会理事長を務めた。著書に「複眼の映像 私と黒澤明」がある。