4人組ロックバンド、T-BOLANが10日に東京・中野サンプラザで行ったライブを取材した。

 1988年(昭63)7月22日に前身の「BOLAN」としてインディーズデビューして、ちょうど30年。記念イヤーの幕開けにもなった同ライブでは、普段はどちらかというと黙々とギタープレーに徹する五味孝氏(ごみ・たかし)の言葉に、胸が熱くなった。

 同バンドは、91年にメジャーデビューすると、「離したくはない」「マリア」などがヒット。92年の「Bye For Now」はミリオンヒットも記録した。ところが、95年にボーカル森友嵐士が心因性の発声障害を発症し、活動休止状態に。99年には一度、解散した。12年すぎから再結成し、徐々に活動を再開したが、15年にはベースの上野博文がくも膜下出血で倒れるなど、紆余(うよ)曲折を経てきた。

 ライブの終盤。9月から、23年ぶりとなる全国ホールツアー開催を発表し、森友から「何か言うことある?」と振られた五味は、熱っぽく語り始めた。

 「(森友)嵐士がのどの不調で歌えなくなったところから、また歌えるまでになる奇跡が起きた。上野が倒れて、またそこから演奏できるまでの奇跡が起きた。あとはバンドとして奇跡を起こすのみ。ホールツアーもあるけれど、アリーナでやるまで辞めないからな。よろしく!」。

 メンバーにとっても、ファンにとっても、予測できない熱だったのだろう。会場は、この日1番ではないかというくらい、大歓声に包まれた。

 何が五味をそう言わせたのかは分からない。それでも、ライブ中盤に森友が五味について「94年くらいだったかな? 声がおかしくなって、スランプというか、同じ曲をずっと1年間スタジオで歌い続けたことがあった。そんなとき、黙ってついてきてくれたのが五味だった。こんなこと言ったことないけど…。ありがとな」と話す場面もあり、感慨深かったのかもしれない。

 この日のライブでは、上野も8曲に参加して、順調な回復ぶりをアピールした。9月から始まるツアーも、90年代前半の音楽シーンを盛り上げたあの勢いを、再び感じさせてくれるものになりそうだ。