公開中の映画「未来のミライ」(細田守監督)の子供向けイベント「デジタルがひらくこどもアートの世界」を取材した。

 元々「細田監督に聞く!」と銘打たれていたイベントだったが、この日細田監督は高熱のため欠席、代打として「スタジオ地図」のプロデューサー斉藤優一郎氏が出席した。斉藤氏は11年に細田監督とアニメーション制作会社「スタジオ地図」を設立、プロデューサーとしては06年公開の「時をかける少女」からコンビを組む。取材する側としては、旬の監督の不在に残念な気持ちもあったが、プロデューサー視点で語られる監督の話も面白かった。

 富山県出身の細田監督は幼い頃から画家志望で、斉藤氏いわく「剣岳を書かずに、変化し続ける雲をずっと書いている少年だったようです」。現在の監督については「一休さんのとんちみたいなことを言うんです」と笑う。「おおかみこどもの雨と雪」では「映画の中で風を吹かせたい」と難題を与えたり(背景画にCGを重ねることで解決)、渋谷を舞台にした「バケモノの子」では、スクランブル交差点を歩く4000人に時代の流行を反映させたり(企業看板など徹底した時代考証)と、大変な要求も多いという。斉藤氏は「グッタリしました」と苦笑したが、「何でも積み上げていくんですね」と監督の姿勢を語った。

 「未来のミライ」に登場する“未来の東京駅”も、イメージを膨らませるためにイギリスとフランスを旅したという。「たくさんの駅を見たんです。オルセー美術館とか、駅のモチーフが残っている建造物を。お庭を見て回ったり」。ほんの一部と分かってはいるが、1つの物語を作り上げるために、こんなにも気の遠くなる作業を繰り返すのかと驚かされた。

 雪の降るシーンでも、監督は粒の落ちる速度や数にこだわりを見せていたという。斉藤氏は「雪って白いイメージがある。でも、見上げると黒っぽかったりするんですね、逆光になるから。雪1つとっても、『白いんじゃないんだよ』ってところから始まるんです」。そうなのか、と目からうろこを落としつつ、富山に降る雪を見上げる感性豊かな細田少年を想像してしまった。