BSテレビ東京初の連続ドラマとして15年に第1期が放送された「ワカコ酒」の、第4期が7日から同局でスタートする(月曜深夜0時)。

主演の武田梨奈(27)がニッカンスポーツコムの取材に応じ、主人公の村崎ワカコを4年にわたって演じた思い、今後の女優業について語った。【村上幸将】

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10歳で空手を始め、09年の映画「ハイキック・ガール!」で世界のアクションファンを驚かせ、14年のセゾンカードのCMで頭突きでの瓦割りを披露して大ブレイクした武田にとって、街をさすらい、グルメや酒を楽しむ26歳のOLを描く「ワカコ酒」は、対極にある作品だった。“酒呑みの舌”を持って生まれたワカコを演じるのに酒自体、苦手だったのだ。

武田 第1期の前は、誰かの誕生日や打ち上げなど、イベントごとに少し飲んだんですけど基本、あまり飲まなくて。でも、ドラマが決まって、飲めないなんて言えなかったので、本当に申し訳ないけれど、最初は「たしなんでいます」とウソをついていました。(放送後)行きつけのお店に行ったら「ビールは、あんなチョビチョビ飲まないよ」みたいに、いろいろな方に教えてもらったり、視聴者の方が優しいまなざしで「飲みっぷりが物足りない」と言ってくれました。

26歳のワカコを初めて演じたのは23歳の時だった。視聴者や先輩の役者から叱咤(しった)激励を受ける中、4年たち実年齢が役の年齢を超え飲み方も板についてきた。

武田 (4期で)かなり食べ、飲みましたね(笑い)飲めなかったお酒も、飲めるようになって。今回、ビールを飲むシーンも、気付いたら1口で半分くらい飲んじゃったりして「飲みすぎだよ」って言われるくらい、ビールを欲している自分がいます(笑い)第4期をやるまでに、それまでの3期を1回、見直していろいろ、思うところがあったので4期は1番、思い入れがありますね。(第1期は)背伸びしている感じはありました。今は「お酒って、こんなにおいしいんだ」と感じて…以前は、お酒だけで飲んでいたんですが、この食べものには、このお酒が合うというのは「ワカコ酒」を通して教えていただきました。飲みに行かない日は家でビールを開けて飲んだり、お風呂上がりには必ず1杯飲んだ方が次の日、体調が良かったりするようになって。血流が良くなっている気がします。監督たちにも「急に大人な飲み方になったね」と言っていただけて…自分では大人っぽく飲もうとか、意識はなかったんですけど。

4期、演じてきたワカコへの、こだわりは深い。

武田 ワカコのことが、すごく分かってきました。こういう女性なのかな? と思って演じていたのが、今は「ワカコだったら、こう思います」って自ら提案させていただくことも増えましたし、ナレーションも結構、アドリブを入れられるようになって。「このセリフ、ワカコにしては、かわいすぎるので、ちょっと変えても良いですか」と言って変えたりしました。すごい生意気な発言をしちゃうと「ワカコのことは私が1番、今、分かっている」というくらい、ワカコに対しての自信があって…その分、作品に対してのプレッシャーだったり重みは、もちろんありました。4期までやらせていただけて、すごくうれしい。当たり前じゃないことですし、これをどうやって、また変えていくか、皆さんにどう楽しんでいただけるか…さらに考えるようになりました。

ワカコと向き合う中で、自らの変化も感じている。

武田 ワカコは永遠の26歳なんですよ。すごく面白いと思いますし(26歳のワカコを)理解できるようになりました。例えば、嫌なことがあった時のお酒の飲み方。若い頃って、嫌なことを忘れようと、やけ酒もするじゃないですか? そうではなく、お酒を飲んで自分を見つめ直す。お酒を飲むと、素直になれたりするじゃないですか。普段、自分の中で頑固だったり強がっている気持ちを、ちょっと和らげてくれるというか…お酒を飲んで素直に言えることもありますし、自分の悪いところもいいところも、お酒が教えてくれるというのはありますね。父とは仲が良いですし、お酒を飲みに行くことはあるんですけど、2人で飲みに行くことが増えたので、そういう時に今まで言えなかったことが増えたりして。

ただ、昨夏に行われた撮影中は葛藤していた。それがスタッフとの付き合い方にも変化となって表れた。

武田 葛藤している時期でした。これまでは「ワカコ酒」をやる時、いつも楽しい! という感じだったんですけど、第4期は考えることもたくさんあって…。いつもは夜7時前に撮影が終わると「早く終わったから、飲みに行くぞ!」って飲みに行っていたんですけど、今回は誘われても「すみません、ちょっと帰らせていただきます」って、撮影中に1回も飲みに行かなくて。明日のシーンのことを考えたい…自分の時間をつくりたくて。余裕もなかったのかも知れないですけど、今までの中で1番考えながらやりました。

第1話で、ワカコが行きつけの「逢楽」の大将(野添義弘)の前で悩みをにじませるシーンは、等身大の武田を感じさせる。

武田 ケアレスミスを叱られて「逢楽」に入って落ち込んだ、後半のシーンですね。監督には「ちょっと暗くなり過ぎだから、ちょっとだけ、にこやかに暗いみたいな感じで」とバランスは整えられました。私は、感情をあまり表に出さないタイプの人間で、若い頃はいつも気合を入れてます、という感じだったんですけど、年を重ねて大人に近づくにつれて(感情を)表に出せるようになったのかも知れないです。普段、怒ったり、泣いたりは絶対に見せなかったんですけど…怒っていることを隠さなくなりました。今は行きつけのお店で悩み相談を出来るようになった。ちょっと、大人になっているのかなと思います。お店の大将に何か相談するのは今までなかったですし。(人生)経験もあるかもしれないです。

30代も近づく中「ワカコ酒」はアクション女優にカテゴライズされた武田に、新たな引き出しを与えた。

武田 ご縁に感謝しなきゃと思いますし、新しいジャンルを切り開かせていただいたのはうれしいですね。でも、まだまだ、やりたいこともたくさんあるので、いろいろ考えています。

「瓦割りCM」のイメージが強く、ドラマやバラエティーで蹴りや頭突きを要求されることもあり、女優として認められたいのに「頭突きの子」というイメージが付きまとう苦悩もあった。それが街中で、ワカコが酒を飲んだ時に漏らす「ぷしゅー」を交え声をかけられる機会も増えた。「ワカコ酒」を4期続けたことで「空手の子」というイメージを乗り越えつつある。

武田 (東京・新宿の)ゴールデン街に1人で飲みに行った時に、隣にいたお客さんに「お姉ちゃん『ワカコ酒』みたいだね。知ってる?」って言われたんですよ。「あぁ…なんか聞いたことあります。ドラマ、やってますよね」って返して…うれしかったですね。その後で「実は…私なんですよ。見てください」って言いました(笑い)韓国料理屋さんで食べていた時も、キッチンから中の方が出てきて「いつも『ぷしゅー』見ています!」と、わざわざ言いに来てくれて。居酒屋に行くと「ワカコ酒」の話題を出してくださるので、飲みに来る方だけじゃなくて、食を扱っている方、お酒に関わる仕事をされている方も皆さん見てくださっていると感じます。「『ワカコ酒』やっている方ですよね。空手やっているんですか?」など、空手をやっているって知らない方も。(空手と)リンクしない、別人だと思われているんだなと。自分の中では、本当にホッとしますしうれしいです。続編をやりたいと言っても、なかなか出来るものではないので、皆さんの支持あってこその続編…すごくいい作品に出会えたと心から思います。

次回は、武田に女優としての夢、方向性を聞く。