西野カナ(29)が3日、無期限活動休止前の最後のライブを横浜アリーナで行った。この日のライブは、全国47都道府県や過去にライブを行った香港、台湾など計98カ所に生中継され、多くのファンが見守った。平成の歌姫は平成の終わりとともに、いったんマイクを置いた。

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優しげな雰囲気を持つが、客観的な視点を持ち、しんが強い人でもある。

歌が好きで、漠然とだが、小学生から歌手を目指していた。音楽番組でマライア・キャリー、クリスティーナ・アギレラら海外アーティストのミュージックビデオを見るのが好きだった。派手な演出の世界にいる女性にあこがれた。ほか、J-POP、ヒップホップ、レゲエと、あらゆる音楽に触れた。高校時代は2年間民謡を習い、発声の基礎を学んだ。幼いころからの夢を実現させる基盤を着実に築いてきた。

デビューと大学進学が重なったが、仕事と学業を両立させた。仕事先の東京と大学のある名古屋を往復する日々を4年間続けた。時々だが、夜中に名古屋に戻った後、友人と遊びに出かけ、寝ないで授業に出るタフさも持っていた。

歌詞のほとんどを手掛けるが、書きためはしない。「平均値」を大事にするスタイルを築いた。「多くの人と気持ちが重なることってすごくいいなと思うから、なるべく当てはまるように」と実体験に加えて、友人やスタッフにも取材も行った。作詞時に最も大切にすることは「冷静であること」。共感を呼ぶ歌詞作りの裏には戦略もあった。

以前、歌手をずっとやりたいか聞くと「声が出れば。歌手以外の仕事で、できることがないと思う」と話しただけに、歌手生活が嫌になったとは思えない。人々の共感を呼ぶクオリティーが高い歌詞を生み出し続けるには、インプット=充電が必要-。活動休止を決めた理由の1つに、冷静な判断もあったとみている。【近藤由美子】