「敦煌」「人間の証明」「男たちの大和/YAMATO」などを手がけた映画監督の佐藤純弥(さとう・じゅんや)さんが9日午後11時、都内の自宅で亡くなっていたことが17日、分かった。多臓器不全による衰弱死だった。享年86。

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58年に入社した東映では、2歳上の深作欣二監督とよく比較された。情熱を前に出す深作監督とは対照的に淡々と仕事をこなす職人肌だった。

日中合作「敦煌」(88年)の中国ロケに同行して、そのことを実感した。中国側からの事細かな条件提示、混合スタッフ…度重なるアクシデントにもかかわらず忍耐強くまとめ上げた。

きさくな人柄が武器だった。1000人を超す現地のエキストラに対しては笑顔で「脇を引き締め、目線はこちらに」。余計なことは言わなかった。監督作「君よ憤怒の河を渉れ」が中国で大ヒットしていたので、現地では「佐藤先生」。その先生が笑顔で接するから、心はわしづかみだった。

おうような演出は、何度も主演した高倉健の個性を生かし、まれに出す端的な指摘は的を射ていた。積極的に題材を探すというより「何でも来い」という受けの姿勢は、時として「北京原人 Who are you?」(97年)のような怪作も生み出したが、残した監督作品のほとんどは映画史に残る大作だ。

大作の企画スタート時には真っ先に名前が挙がる人、そしてどこまでも穏やかだった人の喪失感は深い。【相原斎】