ロック歌手で俳優の内田裕也さん(本名・雄也)が17日午前5時33分、肺炎のため、都内の病院で死去した。79歳だった。容体が急変したため、家族は看とることができなかった。妻で女優の樹木希林さん(享年75)に先立たれてから6カ月。ロック界のカリスマも、天寿を全うし希林さんの元へと旅立った。葬儀・告別式は近親者で行い、後日お別れの会が営まれる。

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内田さんがこうべを垂れ、合掌した姿が忘れられない。11年5月12日、内田さんは交際していた女性に別れ話を切り出され、復縁を迫り脅したとして強要未遂と住居侵入の疑いで逮捕された。その後起訴猶予処分となり、釈放されてから約1時間半後に足を運んだのは希林さんの自宅だった。

希林さんからは逮捕当日に「生き方を変えて区切りをつけてほしい。自分も逃げないで引き受ける」と猛省を促すコメントが出ていた。内田さんは玄関前に立ち、仏壇に拝むように静かに両手を合わせた。唇はわずかにゆがみ、目は閉じていた。30秒ほど拝んで一礼し、車に乗って立ち去った。樹木さんは不在だった。

同6月3日の釈明会見で、内田さんは勾留中に1度、面会に訪れた樹木さんに「謝らないんですか」と迫られたとし「会うと怖い。前の晩も眠れなかった。ただ来てくれてうれしかった」と明かした。「結婚は1度きりと固く決めている」と離婚は否定し、希林さんを「大好き」とも言った。

希林さんの葬儀に、内田さんは車いすで参列した。葬儀の最後に1974年(昭49)10月19日に英ロンドンから希林さんに送った手紙を1人娘の也哉子が代読した。

「裕也に経済力があれば、もっとトラブルも少なくなるでしょう。俺の夢とギャンブルで高価な代償を払わせていることは、よく自覚しています。(中略)この野郎、てめぇ…でも、本当に心から愛しています」

7年4カ月前に合掌した時と同じく、微動だにせず耳を傾ける内田さんの姿に結婚45年、別居を43年続けた、特殊な夫婦の愛の形を見た思いだった。【村上幸将】