写真家篠山紀信氏(78)が半世紀にわたり撮り続けたポートレートを展示した「篠山紀信展 写真力」の動員が累計100万人を突破し、18日、東京ドームシティ・ギャラリーアーモで篠山氏が記念セレモニーに参加した。

12年から7年間、全国33会場で展示され、今回の東京展が「The Last Show」と銘打たれた最終会場。主催者によると、人物をフィーチャーした写真展としては国内初の100万人突破という。篠山氏は自身が撮影した王貞治や長嶋茂雄、広末涼子、羽生結弦らの写真パネルの前で、100万人達成の来場者にサイン入り図録などを贈呈した。

写真は時代の写し鏡、という篠山氏。「(被写体の)カップルの人は、撮った時はガールフレンドだったのが、結婚して、子供が1人いたりとか」と、時の流れを回想。被写体の森光子さんや中村勘三郎さんは期間中に鬼籍に入り、展示場所を「STAR」から、故人を集めた「GOD」の展示場所に変えるなど、時代に合わせた変化もあった。篠山氏は「ひとつとして(33カ所で)同じ展覧会はなかった。鑑賞じゃなくて体感。写真にもいろいろな見方がありますけど、これはライブですね。美術館は普通、権威的で制度的なところで、『鑑賞』なんですけど、これはそうじゃなくて、空間に体をひたして感じなさい、と言う展覧会。そういうのは今までなかった」と分析した。

水着姿の山口百恵さんなど、篠山氏ならではのお宝写真も展示。「山口百恵さんのところに行くと、見た人が『(雑誌)GOROに出てたよな、見てたよ俺。その時浪人してたな。でも付き合ってた女により、この写真の方が世話になったな』とか、いろんなことを思う。それが面白いところ」とアピールした。

展示された写真を撮った場面すべてを覚えている、という篠山氏。「1人として、同じということはない。基本は、撮ってやるではなくて、撮らせていただくという、相手に対するリスペクトが、写真家には必要。そうしないと、その人のいいところが出てこない。善意の写真家です、私は」。ジョークで締めつつ、現役写真家としてあふれるバイタリティーを見せた。東京展は10月27日まで。