札幌市出身の女優で歌手の三浦透子(23)が、31日に東京・NHKホールで行われる「第70回NHK紅白歌合戦」(午後7時15分~)に初出場する。ロックバンドRADWIMPSとともに、今夏、公開され大ヒットを記録しているアニメ映画「天気の子」(新海誠監督)の楽曲を紅白スペシャルで届ける。30日はリハーサルに参加。多彩な才能に注目が集まる三浦に、音楽、芝居、故郷への思いについて聞いた。【取材・構成=浅水友輝】

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-想像すらしていなかった国民的歌番組のステージ。歌うことを楽しんだ1年を締めくくるのにこれ以上の舞台はない。

三浦 ある意味なにも考えずに楽しめている気がします。(これまでも)ライブが一番緊張しなかった。お客さんがいる方が受け取り手の顔が見えて、入り込める。

-今年公開され140億円超の興収を記録した映画「天気の子」。オーディションの末に劇中歌「グランドエスケープ」「祝祭」の2曲でボーカリストに起用された。紅白では新海監督が自ら編集したスペシャル映像とともに歌唱する。劇場公開された映画と同様に新海作品のピースになる。

三浦 「天気の子」は映画の中に音楽が組み込まれているので、ともするとじゃまになる、気が散る。そうならないように新海さん、RADWIMPSさんが話し合いを重ねて作り込んでいるのも分かっているので、余計にこのストーリーを届けるために歌わなきゃっていう責任みたいなものを感じました。

-初日に劇場で映画を見たときには「変な感じがした」というが、最近はさまざまな場所で耳にすることも増えた。

三浦 ドラッグストアにいったときにオルゴールバージョンの「グランドエスケープ」が流れていた。最初全く気づかなくて、よく聴いたら「自分の歌だ」みたいな(笑い)。バラエティー番組でも使われていて、なんか不思議です。

-映画の大ヒットとともに表現力豊かな歌声は注目を集めた。音楽番組出演や横浜アリーナでのRADWIMPSのライブ参加など初めての体験も多くした。

三浦 楽しかったですね、とにかく。人生でやると思っていなかった仕事ばかりだった。新しいことに挑戦できて、新鮮な気持ちにもなれるし、新しい人にも出会えている。それはお芝居の現場にも還元できている気がするので、すごく楽しい1年だった。

-今年は歌声で脚光を浴びたが、振り返れば5歳で世間の注目を集めている。芸能界デビューは清涼飲料水のCMで「2代目なっちゃん」(※1)としてだった。当時保育園に通っていた少女が大人気CMに抜てきされた。

三浦 なっちゃんが地元から出る(生まれる)ことはけっこう大きなことで。(当時の保育園の)先生方は大変だったと思います。

-芸能界入りして18年。これまで映画、ドラマへの出演を重ねてきた。役者として自問自答してきた。

三浦 常に思っているのは本当に偶然の重なりで今ここにいる。なんとなく友達と行ってみたオーディションが「なっちゃん」だった。自分で最初に選択していないというコンプレックスはあった。だから学校にも積極的に通った。いろいろな可能性を考えた。それでも今やっていることがすごく楽しいし、やりがいがある。続けられていることは意味があると思うから、その意味をせっかくだから形にしたい。

-小学校卒業を機に北海道から東京に移り住んだが原点は生まれ故郷にある。

三浦 自分の根幹というものが作られている気がしている。もう1回北海道に住みたいです、おばあちゃんとかになったときかもしれないですけど。

-札幌には母方の祖父母が暮らす実家が残る。11月には里帰りし、幼少期に通っていた保育園を訪ねた。

三浦 私がいたときの先生が3人ぐらいいてMステのときとか先生同士のグループラインが大騒ぎになったとか、うれしいお話を聞けた。

-3月に大学を卒業した今年は新たな1歩を歩み始めた1年でもあった。今後目指すものは。

三浦 1つ1つ丁寧に良い作品を残すように頑張っていきたいと思っていますし、音楽ではせっかくいただいた出会いもある。続けていきたい。歌とお芝居は全然違うけど、私という人間が表現するという部分ではそんなに変わらない。

※1 サントリーの清涼飲料水「なっちゃん」のCMキャラクター。初代は田中麗奈。三浦は約3000人の中からオーディションで選ばれた。

三浦の歌の才能を発掘したのは、映画監督タナダユキ氏だった。自身が手がけたCM現場で、三浦の声の美しさに魅了され、映画「ロマンス」(15年)ではエンディング曲を依頼した。才能を見いだされた三浦は17年にカバーアルバムをリリースし、同作が「天気の子」のボーカリスト抜てきにつながった。

新春の映画「ロマンスドール」(来年1月24日公開)では初めて女優として同監督作品に出演する。高橋一生演じる夫・哲雄と蒼井優演じる妻・園子の結婚後10年間を描いたもの。夫婦のすれ違いのきっかけとなる独身OL役の三浦は「監督とは芝居でお会いしていないので緊張も恥ずかしさも少しありましたが、すごくうれしかった」と撮影を振り返った。

◆三浦透子(みうら・とうこ)1996年(平8)10月20日生まれ、札幌市出身。02年サントリー清涼飲料水のCM「2代目なっちゃん」でデビュー。歌手としては17年にカバーアルバム「かくしてわたしは、透明からはじめることにした」をリリース。出演作に17年「月子」、18年「素敵なダイナマイトスキャンダル」、19年「あの日のオルガン」。20年には「架空OL日記」「静かな雨」の公開も控える。今年3月に大学を卒業(専攻は数学)。ユマニテ所属。157センチ。