作家今村翔吾氏(35)の小説「八本目の槍」(新潮社)が2日、第41回吉川英治文学新人賞を受賞した。

豊臣秀吉が柴田勝家と争った賤ケ岳の戦いで、華々しい活躍をした小姓組の7人(加藤清正、福島正則ら)は「賤ケ岳七本槍(やり)」とたたえられた。七本槍には数えられなかったものの、これら7人に深くかかわり、ゆるやかにつなぐ者がいた。それが佐吉、後の石田三成だったという物語。

同賞は、公益財団法人吉川英治国民文化振興会が主催し、講談社が後援する1980年に創設された文学賞。選考委員の合議によって決定され受賞者には正賞として賞牌(しょうはい)、副賞として100万円と置き時計が授与される。

受賞の報を京都の自宅で聞いた今村氏は「何回経験しても、賞はドキドキものです。聞いた瞬間、ガッツポーズを作りました」と喜んだ。「この受賞で僕の文章がどう変わるのか、楽しみです」と目を輝かせていた。

当初は東京で出版関係者や友達を招きボウリングをしながら待つ予定だったが、新型コロナウイルスのまん延により自粛し、自宅で待っていた。

今村氏は1984年(昭59)、京都府生まれ。デビュー作「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」(祥伝社文庫)で18年に第7回歴史時代作家クラブ・文庫書き下ろし新人賞を受賞。同年、「童神」で第10回角川春樹小説賞を受賞(のちに『童の神』と改題し、角川春樹事務所より書籍化)。昨年は「八本目の槍」が「週刊朝日」歴史・時代小説ベスト10で第1位に選ばれていた。