志村さんは、細部まで徹底的に練り上げて笑いを作り上げた。TBS系「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」の番組でプロデューサーを務めたTBSの落合芳行氏も志村さんのストイックな笑いへのこだわりと素顔を明かした。

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とにかく笑いに対して真面目で真摯(しんし)でした。毎週、番組をつくっていましたが、会議で台本をつくるのにも妥協することなく、テーマを決めると絶対に曲げず、いくらでも時間をかける方でした。打ち合わせから2週間くらいかけてセット、道具の準備をしてスタッフは万全を期して収録に臨むのですが、志村さんが収録現場にきて、台本の一字一句やセットがイメージと違うと、その場で直したり、場面ごとカットすることがあるくらいストイックでした。

また、仕事以外の時も笑いのことばかり考えている方でした。当時、番組のスタッフにさまざまなジャンルの洋画をリクエストし、貪欲にご覧になっていました。その作品がパロディーのネタになったり、コントの展開のヒントになることもあり、とにかく引き出しが多かったです。私たちスタッフもついていくために必死でしたが、とても勉強になりました。

プライベートの部分では、たまにお酒を飲みに誘ってくださるのですが、とてもシャイな方で「今のは、誘われたのかな?」と思うような声のかけ方でした。ご一緒させていただくと、現場とは全くの別人というくらいとにかく優しくて、ネタの話などは、ほとんどしない方でした。

何十年もお茶の間に笑いを届けてくれて、今のどんよりしたムードの世の中に一番必要な人がコロナウイルスでこんなことになってしまったのか。「何で志村けんさんなのか?」というのが残念でならないです。また、番組をご一緒させていただきたかった。