新型コロナウイルスの影響で公開が延期された映画「劇場」が17日から映画館で公開され、同時にAmazonプライムビデオで全世界配信する。日本映画製作者連盟(映連)の「最初に映画館のみで公開されたものを映画として認める」という規定に外れ、国内では映画として認められなくなることを覚悟で、日本映画史上異例の取り組みで公開に踏み切った、行定勲監督(51)に真意を聞いた。

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「劇場」は公開6日前の4月11日に延期が決定。行定監督は近年の代表作と自負するが、松竹配給で280館と規模が大きく公開は来年にずれ込むことになった。旧作となり、多額の宣伝費などの回収も必要な中、Amazonから配信を持ち掛けられた。

「映画館でかからないと僕の完成形はない。踏ん切りがつかなかった」心境が、4、5月にリモートで短編映画を2本製作したことで変化。計31万回も再生され「こんなに広がるんだ。映画館と同じように(ユーザーは)見たものでいち早くつながろうとする」と感じた。Amazonが映画館での公開も認め、単館系20館と規模は大幅に縮小も公開同日配信を決めた。映連の岡田裕介会長からは「現段階では規定がない。不運だが映画ではない」と告げられた。同会長は公開同日の配信にも「映画館をつぶしていくことになる」と考えている。

行定監督は「映画館を守る立場にある方としては、ごもっとも。でも製作側としては、映画館で公開する映画と配信で公開する映画、両方あって良いと思う」と訴えた。一方で「日本映画界で培ったものがある。育てられた」思いはある。「存続していくべき」と、映画館の力を信じるからこそ確かめたいことがある。

「配信で見た人も『映画館で見たい』と思えば足を運ぶ。配信したから映画館の観客が0なのか知りたい。作り手の僕が映画だと思ったら映画。観客も映画と思ってくれたらうれしい」

行定監督は映画館で「劇場」の幕が開けるのを心待ちにする。【村上幸将】

○…映連の岡田会長は「行定監督とは話はした。(決断は)大変だったと思う。でも、映画ではないとは伝えた」と「劇場」を映画とは認めない考えを示した。公開同日の配信についても「映画館を必ずつぶしていくことになる」と、映画館の興行に影響を及ぼすと強調。「DVDレンタルの売り上げの方が配信より多い。2次利用として、レンタルと配信を平等に扱わないといけない」と説明した。