今、ユーチューバーがアツい。勢いがある話題のユーチューバーに話を聞く連載「YouTuberが新聞に!!」に、ゆゆうた(32)が登場です。

今年5月、生配信で24時間ピアノを弾き続けるという驚異の挑戦を成功して話題に。チャンネル登録者数は140万人。「才能をドブに捨てた男」として知られる卓越したピアノの技術と、持ち前の体力、情熱を武器に投稿を続けています。

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「もともと、人と話すのが苦手なんですよ」と笑う。動画内では陽気なキャラクターを見せるが、「学生時代は空気みたいな存在。友達もそんなにいなかったですし。パッとしなかったです」と打ち明けた。

ピアノとの出会いは5歳ごろ。毎日1~2時間練習し、週に1回のレッスンを18歳まで続けた。中高一貫の神奈川・桐光学園を卒業。首都大(現・東京都立大)に進み軽音サークルに入るも「大学にもなじめなかった」と振り返る。

卒業後、11年にビルの施工管理などを行う企業に就職。「残業も多くて、週休1日。本当に仕事して寝ているだけのような生活でした」と回想する。

ある日「何かできるとしたら、曲を作るとか演奏しかないな」と思い立ち、当時のインターネット掲示板「2ちゃんねる」への楽曲投稿を始めた。それからは、1日平均3時間睡眠の生活を送り、動画サイト「ニコニコ動画」にも投稿。16年ごろから「ニコニコ生放送」で生配信もスタート。ネット上にさらされた自宅住所を自ら歌詞にして曲を作り、笑いに変えたこともあった。

18年5月にYouTubeのアカウントを開設。徐々に「ゆゆうた」という名前が広まっていったが、同年秋に、職場をさらされてしまった。「仕事に支障が出て、これ以上、会社に迷惑をかけられない」と、昨年1月に退職。裸一貫、ユーチューバーとして走りだした。

「当時のチャンネル登録者数は十数万人。生きるか死ぬかだったので、1日2本、3本と動画をあげた。数カ月で、サラリーマン時代くらいにはなんとか稼げるようになりました」

さらに、人気ユーチューバー、水溜りボンドとのコラボ動画が話題に。聴いた曲をその場で演奏、アレンジできるという卓越した「耳コピ」能力を持ちながら、下ネタや自虐ネタを連発。「才能をドブに捨てた男」としてユーザー間に浸透していった。

今年5月9日、24時間連続でピアノを弾き続けるという前人未到の生配信チャレンジをスタート。「ピアノが僕よりうまい人なんてYouTuberに腐るほどいる。技術で勝てないなら、耐久系でいくしかない。24時間ならそうはおらんやろ、と思いました」。トイレにすら行けないという過酷なルールだったが、オムツ着用で演奏するド根性で、翌10日に見事完走した。

「生死をさまよいました(笑い)。終わった後は、熱中症のような、体のしびれでビリビリして。次の日からは真っ白な灰になった感じ。燃え尽きました」

話題性は抜群で、SNSのトレンドも席巻した。

「『何時間連続でピアノ演奏』は、多分僕が開拓したフィールド。ピアノって、高尚でハードルが高い感じがある。その敷居を極限まで下げて、ファストフードみたいにできればいいなって思っています」

今や人気ユーチューバーの仲間入りを果たし、「青春を取り戻している感じです。街で声かけてもらえるようにもなって、ありがたい」と素直に喜んだ。

企業からオファーを受けるようにもなってきた。「部屋探しの時にお世話になった」という不動産会社「おたくのやどかり」の公式アンバサダーにも就任。「いつか東京ドームを貸し切って、24時間ずっと弾いてる、みたいなイベントがしたい」と笑う。

動画投稿は「おじいちゃんになっても続けます」と言い切る。「投稿を止めたら死んじゃいます。忘れられそうな気がして。強迫観念。過去の人になりたくないですから」。人生をまるまるかけた耐久レース。とにもかくにも、ゆゆうたはピアノを弾き続ける。

【横山慧】

◆ゆゆうた 本名・鈴木悠太(すずき・ゆうた)。1988年(昭63)7月2日、神奈川県生まれ。幼少期からクラシック好きで、母親の友人がピアノの先生だったことから勧められ、5歳でピアノを習い始める。大学時代の07年に「ニコニコ動画」に楽曲を初投稿。当時は数曲投稿したが再生数が伸びずにやめた。ゲームやアニメソング、有名楽曲のアレンジなどを中心に幅広い楽曲を演奏する。