1950年代、太平洋で行われた核実験による放射能汚染問題を、世の中に問い続けている地方局のディレクターがいる。南海放送(松山市)の伊東英朗氏。

日本の放射性物質を計測し続けている気象研究所のデータによると、最も高い数値を記録したのは2011年の福島第1原発事故、そして次に高いのが1963年。50年代から65年にかけて高い数字を示しているという。

この50年代の放射性物質は核実験によって生まれ、風で運ばれ、雨でフォールアウトしたものだという。さらに、米英の核実験は太平洋の島々で行われ、そこにはマグロ漁場があった。伊東氏によると、100回以上の核実験が行われる中、マグロ漁は続けられ、マグロは水揚げされていたという。

そこで、伊東氏は04年、ドキュメンタリー「わしも死の海におった~証言・被災漁民50年目の真実~」を製作。ローカルで放送された。以後も、全国放送も含め計17本のドキュメンタリー番組を製作したほか、12年からは映画も2本製作し、世間に訴えてきた。

伊東氏は「世界規模の問題がなぜうやむやになっているのだろう。本当に影響はないのだろうか。私はその疑問を抱えながらこの問題を取材してきました」。そして「番組で一方的に伝えるだけでは事件の解明につながらないと考えるようになりました。私がより多くの人に語りたい。アクションツールとして映画を製作しました」と話した。

そこで、映画「放射線を浴びたX年後3」(来夏完成予定)を全米公開し、語りかけ活動を行うことを決意した。今年5月に日本テレビ系NNNドキュメント’20で放送された、英国の核実験周辺で被ばくしたマグロ漁師と核実験に参加した英国兵士の被害を描いた「クリスマスソング」をベースに、来夏の完成を目指す。全米公開のため、これまでのように日本のスポンサーに頼ることもできず、クラウドファンディング(https://readyfor.jp/projects/FALLOUT)を行うことになった。

目標金額は1000万円で、期間は12月25日まで。