6日に米連邦議会議事堂を襲撃したトランプ米大統領の支持者たちが報道映像やSNSの投稿などを元に身元が特定されて次々と逮捕・起訴されているが、中でも一躍注目を集めているのが水牛の角で覆われた毛皮の帽子をかぶり、顔を米国旗と同じ赤白青の3色に塗ってやりを振り回していた男性だ。米極右が提唱する陰謀論「Qアノン」の熱狂的支持者で、Qアノン・シャーマンとして知られる通称ジェイク・アンジェリと呼ばれる被告は、暴力的な不法侵入や治安を乱す行為などで起訴された。「大統領の要請でデモに参加した」と議事堂乱入について語っているが、英メール・オンライン紙によると男性は自称俳優で無職の33歳だと伝えている。独特な風貌がメディアで報じられると、SNSでは英バンド「ジャミロクワイ」のボーカル、ジェイ・ケイに酷似していると話題になり、ケイ本人が自分ではないと釈明する事態にもなっていた。

英メディアによると、男性は悪魔崇拝の小児性愛者がトランプ大統領の失脚を企てていると信じており、これまでも全米各地で極右のデモに参加してきた有名人だというが、私生活では家賃滞納でアパートを追い出され、アリゾナ州で母親と一緒に暮らしているという。地元の住宅街では襲撃の時に着用していた水牛の角のかぶり物をして道路をうろつく姿が頻繁に目撃されていたほか、母親の家の屋根の上で踊る被告の奇行を目撃していた人もいるという。

議事堂に乱入したデモ隊の多くは逮捕されずにその場を立ち去っていたが、警察は容疑者数十人の写真を公開して情報提供を呼びかけていた。その中には人種差別のシンボル的存在として知られる南北戦争中の南軍の旗を掲げている人や演台を抱えて笑顔で歩く人、ペロシ下院議長の事務所に侵入して机に脚を投げ出し、デスクからペロシ氏宛ての封筒を盗んだ容疑に問われている被告などもいる。多くの乱入者がSNSでライブ中継を行っており、ライブ中継したことで事件に関与したことがばれたり、そこに映り込んでいたことで会社から即刻解雇されたり、大学をクビになった教員らもいると伝えられている。

CNNテレビは10日、事件を受けてペンス副大統領が大統領罷免に同意する可能性があると報じているが、20日のバイデン次期大統領の就任式を前に過激派や熱狂的な支持者たちが再び新たな攻撃を計画しているとして警戒が強まっている。(ロサンゼルス=千歳香奈子)