人気漫画「鬼滅の刃」の原作者吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)氏が、米誌「タイム」が17日に発表した「次の時代の100人」に選ばれた。同誌は、20年10月16日に封切られたアニメ映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」(外崎春雄監督)が、01年の宮崎駿監督のスタジオジブリ作品「千と千尋の神隠し」が記録した316億8000万円を超え、365億5000万円(1月現在)と日本映画の歴代興収記録を更新したと紹介。「ほぼ20年にわたって『千と千尋の神隠し』がトップだった日本の興収記録を昨年、塗り替えた」と評価した。

また、素性を明かさない吾峠氏を「謎の作家」と評した。その上で「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」が、公開初日から3日間で興行収入(興収)46億2311万7450円、動員342万493人を記録したスタートの3日間の記録が「謎の作家への関心を深めるだけの超現実的な結果である」と評価した。

また吾峠氏の初代の担当編集者で、現在「週刊少年ジャンプ」のメディア担当編集長を務める大西恒平氏のコメントを紹介。同氏は、吾峠氏の個性が主人公竈門炭治郎(かまど・たんじろう、アニメの声=花江夏樹)の真面目さ、実直さ、責任感の強さといった設定に通じていると語っている。

「鬼滅の刃」は16年2月15日発売の「週刊少年ジャンプ」で連載がスタートし、20年5月18日発売の同誌まで4年3カ月の間、休載なしで205話、掲載された。大正時代を舞台に、家族を殺した鬼と戦うために修業して「鬼殺隊」に入隊し、鬼と化した妹禰豆子(ねずこ、同=鬼頭明里)を人間に戻す方法を探して戦っていく物語。19年4月から9月までアニメ「竈門炭治郎 立志編」が放送され、人気が爆発的に高まった。

「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」は、原作漫画の7、8巻をアニメ映画化した。40人以上の行方不明者を出しているという無限列車を舞台に、炭治郎たちと史上最強の敵・魘夢との激闘が描かれた。テレビシリーズにも出た鬼殺隊の最高位“柱”の1人で、炎の呼吸を使う煉獄(れんごく)杏寿郎(同=日野聡)が任務に挑む姿が初めて描かれ、後輩の炭治郎らに激励の言葉を投げかけるなど、おとこ気のある姿勢に共感の声が相次いだ。映像美も評判で、終盤に煉獄が上弦の参の鬼・猗窩座(あかざ、同=石田彰)と激闘を演じるシーンをはじめ、アニメを超え、実写の質感があると評価が高い。14日には、劇場版を含めた「竈門炭治郎 立志編」に続くシリーズ「遊郭編」のテレビアニメ化が発表された。

「タイム」は、日本で放送されたテレビアニメが、米国でもNetflixで配信されていること、劇場版が今年後半に北米で公開されることを紹介。「吾峠氏の作品が届く範囲は、さらに広がることが約束されている」と期待した。