TBS系「渡る世間は鬼ばかり」やNHK連続テレビ小説「おしん」など人気ドラマを手掛けた脚本家橋田寿賀子さんが急性リンパ腫のため、4日、亡くなった。95歳だった。

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今から28年前、TBS「渡る世間は鬼ばかり」第2シリーズが始まる時、橋田さんをインタビューした。カメラ撮影など入れず、当時の東京・赤坂プリンスホテルの旧館で、お茶を飲みながらざっくばらんに話を聞いた。熱海在住の橋田さんは、東京で仕事があると新幹線で上京。まとめて取材や打ち合わせをこなしていた。

明るく笑顔が絶えない橋田さんに健康の秘密を聞くと「水泳」ときっぱり。マスターズ水泳への思いを熱く語り、「お酒ばっかり飲んでないで、水泳は全身運動だから夜もぐっすり眠れるから」と力説された。

「渡る-」に登場する年頃の女の子が、セクシー女優にスカウトされて迷うシーンなどリアルな社会状況を取り入れていることを聞くと「ワイドショーを見て、いろいろなことを勉強しているの」。そして、当時はやっていたTバックについても「若い女の子がはいてるでしょ。私も手に入れてはいてみたの。あんなに布きれが少なくちゃ落ち着かないわよねぇ」と笑っていた。

上京して仕事をこなした後は、いろいろな流行スポットを訪れるのも楽しみだと言った。「この間は、イタトマ(当時流行のカフェ『イタリアントマト』)に連れて行ってもらったの。今日も、これからお友達と待ち合わせなんだけど、この人にジュリアナ東京に連れてってもらうのよ」とうれしそうに笑った。

インタビューが終わって、ロビーで雑談をしていると友達がやって来た。その人は、長らくコンビを組んできた石井ふく子プロデューサーだった。橋田さんは石井プロデューサーの元へ駆け寄り、手を振りながら去っていった。その少女のような笑顔が忘れられない。【小谷野俊哉】