フランスで開催中のカンヌ映画祭で最高賞パルムドールを争うコンペティション部門に出品された、濱口竜介監督(42)の新作長編映画「ドライブ・マイ・カー」(8月20日公開)の公式上映が11日、行われ、同監督と三浦透子(24)霧島れいか(48)台湾の女優ソニア・ユアン(30)が参加した。

会場のグラン・リュミエールでは上映後、スタンディングオベーションが起きた。濱口監督は目を潤ませて「こんなに大きな拍手をいただけて感動しています。ありがとうございます。初めて劇場で皆さんと見て、3時間近く一緒に旅をしているような気持ちで見ました。幸せな時間でした。皆さんが集中して見ていただけたという感覚があったので、すごく感激しました」と喜びをかみしめた。

三浦は「すばらしい劇場で、たくさんの人たちと大きな画面でこの映画を見ることができました。この映画を、この先の人生でもたくさん見るだろうけれど、この経験を超えるものは2度とないだろうなという、特別な空間で、特別な経験をすることができました。本当に幸せです、ありがとうございます」と感激した。

カンヌ映画祭には、主人公の家福(かふく)悠介を演じた西島秀俊(50)と高槻耕史を演じた岡田将生(31)は仕事の都合で参加できず、家福の専属ドライバー渡利みさき役の三浦と家福の妻音役の霧島が参加した。濱口監督は「この感激を日本に帰ったら、一緒に仕事させていただいた主演の西島さんや岡田さんたちキャスト、そして支えてもらったスタッフの皆さんと分かち合いたいと思います」と語った。霧島も「非常に感動しました。一生の思い出になりました。今日ここにいるべきキャストの方たちがいないのが残念ですが、いっぱい報告すべきこともできました。いい経験をさせていただき、ありがとうございました」と感激しつつも、参加できなかった共演者、スタッフを気遣った。

「ドライブ・マイ・カー」は、舞台俳優で演出家の家福が満ち足りた日々を送る中、脚本家の妻・音が、ある秘密を残したまま突然この世からいなくなってしまう。2年後、喪失感を抱えたまま生きる家福は、演劇祭で演出を任されることになり愛車で向かった広島で、寡黙な専属ドライバーみさきと出会い、ともに過ごす中で、それまで目を背けていたあることに気づかされていく物語。

濱口監督は、4人の女性の友情と心の機微を描いた5時間を超える長編となった16年「ハッピーアワー」で、ロカルノ、ナント、シンガポールをはじめ数々の国際映画祭で主要賞を受賞。。20年にベネチア映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した黒沢清監督(65)の「スパイの妻」では、野原位氏とともに企画と脚本を担当し、東京芸術大大学院映像研究科の師匠である同監督に企画を持ち掛けた。今年2月のベルリン映画祭では、オムニバス映画「偶然と想像」で審査員大賞(銀熊賞)を受賞。カンヌ、ベルリン、ベネチアの世界3大映画祭を席巻しており、世界で活躍する是枝裕和監督、黒沢監督、河瀬直美監督に続く、日本映画の次代を担う才能として注目されている。

濱口監督の作品がカンヌ映画祭コンペティション部門に出品されるのは、商業映画デビュー作となった18年「寝ても覚めても」以来、3年ぶり2度目。「ドライブ・マイ・カー」の上映尺は2時間59分に及ぶ。西島の出演作品がカンヌ映画祭コンペティション部門に出品されるのは初めて。