阿部寛(57)が24日、東京・ユーロスペースで行われたマレーシア映画「夕霧花園」(トム・リン監督)初日舞台あいさつで、3年前に全編、マレーシアで行った撮影中に、カブトムシを捕まえて控室に連れ帰ったと明かした。

阿部は司会から撮影中の秘密は? と聞かれると、口元にいたずらっぽい笑みを浮かべながら、語りだした。

「マレーシアで、ずっと撮影していて。夜に夕霧の撮影をしていた時に…監督に言ったら怒られるかも知れないけれど、ものすごい大きな照明をたいた。マレーシアは昆虫が多く、大きなカブトムシが飛んできて、それを何匹か捕まえて自分の控室に連れて行った。ついつい…」

主演の台湾の女優リー・シンジエ(45)は「確かに、ある晩、撮影で休憩を取っていたところ、阿部さんのマネジャーが『来て、来て』と言う。阿部さんのところに行ったらカブトムシがいた。わたしは昆虫が苦手で、自分の肌の上にカブトムシがいるのはビックリ」と振り返り、笑った。

「夕霧花園」は、マレーシアのリゾート地キャメロンハイランドを舞台に、亡き妹の夢である日本庭園造りに挑んだテオ・ユンリン(リー)が、有名ながら謎めいた日本人庭師・中村有朋(阿部)と出会い、見習いとなる。日本軍による占領という、ゆがんだ関係にあったマレーシアと日本の因縁を超えて引かれあう2人の運命を、戦中の1940年代、戦後の50年代、そして近代の80年代と、3つの時間軸を通して描く。阿部は脚本を読み、台湾のリン監督と1年近くやりとりした上で出演を決意。演じた有朋は庭師、彫師が役どころで、日本の精神性を表現する文化ということもあり、実際の庭師、彫師、茶道の先生たちに直接、指導を受けた。

阿部は観客に「昨日から(東京)オリンピックも始まり、お忙しい中、ありがとうございます」と感謝した。その上で「僕はこの映画をやって、戦争というのは悲しいものだと実感しました。戦争映画は、どちらかが悪者というのは多いですが、戦争はむなしい。どちらが被害者、加害者という以上に、それ自体が悲しい。社会がいろいろな形で分断する中で、この映画を見て感じていってもらえるとうれしい」と熱っぽく語った。

阿部とリー、トム・リン監督は、この日、リモートで参加した。