TBS系「TOKYO MER」(毎日曜午後9時)で、何ともスーパーな救急救命医を演じている鈴木亮平(38)が、20日公開の映画「孤狼の血 LEVEL2」(白石和彌監督)では一転、猟奇的な極道者になりきっている。

映画「HK 変態仮面」(13年)で、パンティーをかぶった異色のヒーローを演じて以来、役に対するこだわりは毎度半端ないが、救命医と極道者の演じ分けに、改めて振り幅の大きさを実感した。

「孤狼-」の鈴木は言葉で表現できないほどすさまじい。逆らう者は容赦なく殺し、指でその目をえぐる。殺気立った表情には目を覆いたくなるような迫力がある。

「仁義なき戦い」以来、「実録モノ」は数多く見てきたが、経験したことのない怖さである。対照的に瀕死(ひんし)の命を救う「-MER」の優しい目とのギャップは、同じ俳優とは思えない。

演じる役によって数十キロ単位で肉体改造することでは知られていたが、今回は文字通りの表情改造である。

鈴木は「白石監督からオファーをいただいた際に『上林(役名)を日本映画史に残る悪役にしてほしい』という言葉をいただきました。その言葉を踏まえ、私自身が一番怖いと思う人は『自分を悪いと思っていない人』だと思い至りました」と役作りの出発点を明かしている。確かに上林には悪びれたところがみじんも無い。だから怖い。

主演の松坂桃李(32)も、この鈴木の「狂気」をしっかりと受け止める好演だ。五輪の興奮とは趣を変えた「熱さ」を感じることが出来る作品になっている。【相原斎】