大沢真一郎(44)が6日、東京・新宿テアトルで開催中の「田辺・弁慶映画祭 セレクション2021」で上映された映画「春にして頬を拭う」の舞台あいさつに登壇した。コロナ禍で映画の撮影が延期、中止されて俳優として苦境に追い込まれる一方、新宿・歌舞伎町でバーを営む立場としても休業の延長を余儀なくされるなど厳しい状況が続くが、舞台あいさつ後「1本でも多くの作品に関わっていきたい」と、映画への不退転の思いを口にした。

大沢は、劇中で刑事の大河内を演じた。特殊詐欺の受け子をやって生計を立てる、主演のイトウハルヒ(25)演じる志帆、大崎翔洋(23)演じる海斗のカップルを追い詰めたが、村松和輝(40)演じる長年、同期だった刑事・杉浦が海斗に殺害されてしまう役どころだ。

大河内は劇中で、杉浦が殺されてから1年後も2人を追い続けている設定だが、1年が経過した時間軸の中でキャラクターが最も激変したと言って良いほど、クールな刑事から恐ろしいまでの執念をにじませる男に変貌している。大沢は「自分の中でイメージしてきたものの中で、はき違えたものが1個あって。(大河内は)刑事を辞めて個人で追いかけていると思って、監督にお聞きしたらそうじゃなく、非番に独自で動いているという話だと。刑事は続けているんです」と三浦克巳監督督との間に、役に関する見解の相違があったと明かした。その上で「監督に明確にイメージがあり、しっかりとした言葉で説明してくださる。いろいろ聞いて埋めていった感じ」と振り返った。

18年に大ヒットした「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)では、プロデューサーの古沢真一郎を演じた。イケメンながら、コミカルな三枚目を演じきった演技力で根強いファンを獲得した大沢だが「春にして頬を拭う」では、刑事として、そして男としての生き様、誇り、そして悲しみを存分に感じさせる重厚な演技を見せる。撮影は5月に、テアトル新宿近くをはじめとした都内と千葉県木更津市などで行った。「刑事役は3回目くらいですが、バディものが大好き。憧れが強かったので、今回の作品、役どころはうれしかった」と口にした。

昨春からコロナ禍に見舞われ、都内を中心に映画館には営業の自粛が要請された。映画の撮影も止まり、俳優として厳しい時期を過ごした。加えて、19年8月26日から新宿歌舞伎町でバー「ONE CUT」を営んでいるが、飲食店も営業の自粛を要請された。緊急事態宣言の延長に伴い、8月末まで予定していた休業が12日まで延びている。

その中でも「みんなが厳しいと思うと頑張れる。僕だけが厳しいわけではないので」と前を向く。映画の撮影については「大分、戻ってきていて、主演含めて公開待機作が3本あります」と笑みを浮かべた。映画俳優・大沢真一郎は、歩みを止めない。【村上幸将】