新型コロナウイルスに感染、重症化し、8月8日から集中治療室(ICU)に入っていた、リングアナウンサーの田中ケロ氏(62)が意識を取り戻し、回復に向かっていると13日、所属の芸能プロダクションONE COLORが発表した。肺炎の症状は回復傾向にあり、田中氏は家族に「ファンの皆様にリハビリを始めることを伝えて欲しい」と依頼したというが、頭部CT撮影の結果、脳炎の疑いがあり、コロナの治療と合わせて脳神経外科での治療も開始したという。

同社によると、田中氏は7月31日にコロナ陽性判定を受けて、保健所の指導のもとで自宅療養していたが、8日に症状が悪化して病院に運ばれた。次女の声優・田中音緒(24)は自身のツイッターで「8/8に保健所から連絡が取れないとのご連絡をいただき、自宅に向かったところ意識が無い父を見つけました」と明かしていた。田中氏は入院後、投薬により眠っている状態となっていた。

その後、医療関係者の懸命の治療で人工呼吸器を外し、酸素マスクに切り替え、意識レベルも回復し、サポートを受けながら食事をしたり、徐々に会話が出来るまでに回復した。関係者によると、入院からの1カ月は一進一退の状況で、一時は生命の危機にも立たされたというが、医療関係者も驚くほどの奇跡的な回復を見せたという。ただ、投薬によって長く眠っていた影響から、まだ体に不自由な部分もあり、仕事への復帰はもう少し先になる見込みだという。

田中氏は愛知県出身で、1980年(昭55)に新日本プロレスに社員として入社し同年、リングアナウンサーとしてデビュー。独特の抑揚を交えた甲高い声の選手コールに、「時が来た」など試合を盛り上げる前口上を絡めて人気を集め、80年代から90年代を中心に新日本で活躍し、日本を代表するプロレスのリングアナウンサーに上り詰めた。06年に同社を退社後もフリーで活動を続け、シュートボクシングやアントニオ猪木氏の興行などでリングアナウンサーを務め、そのキャリアは40年以上に及ぶ。

プロレス以外にも、12年の「AKB指原・乃木坂終結宣言イベント」や「ももクロ男祭り2012」、13年の「乃木坂46真夏の全国ツアーFINAL」や中山競馬場のジョッキーイベント、日本ダービー騎乗ジョッキー紹介など、芸能をはじめとした各種ビッグイベントでも美声を響かせた。8月17日には、オンラインイベント「田中ケロとカンパイ! チャンピオンベルトの思い出を語ろう!」を同28日に開催すると発表したばかりだった。

20年4月8日には、自身のツイッターアカウントで「自分も含め、絶対に負けられない、人間vsコロナ史上最大の決戦に挑んでいる皆さんにエールという意味も込め、この闘いの前口上やってみました」とツイートして動画を投稿。その中で

「突如、現れし史上最大、最強の敵。日本が、世界が1つとなり戦いへ挑む…その時が来た! 己を守り、愛する者を守るため、全てが力を合わせてつかみ取る、コロナからの完全勝利。さぁ、みな、決戦だ! 人間は絶対に負けない! 人生を賭けた時間無制限一本勝負を行います!」

と力強くコール。その上で「長い闘いになるかもしれませんが、必ず、この闘いに勝ちましょう」とコメントしていた。

田中氏は、投稿した動画で口にした自身の前口上通り、1カ月以上にわたるコロナとの激闘に奇跡的な勝利を挙げた。同事務所は「田中ケロが再びリングに立ち、コールをするその日まで、引き続き応援してくださると幸いです。また、諦めず治療を続けてくださった医療関係者の方々に深く御礼申し上げます」とのコメントを発表した。