歌舞伎俳優中村獅童(49)が16日、東京・渋谷のユーロスペースで、5年前に死去したイランの巨匠、アッバス・キアロスタミ監督作品の特集上映「そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映」の初日舞台あいさつに出席した。

「友だちのうちはどこ?」「桜桃の味」など同監督の7作品が上映される。

20代のころ、ミニシアターに通って同監督の作品を見ていたという獅童は「キアロスタミ監督の作品に出会って衝撃的だった。少年たちの演技じゃ出せない味、自然な姿が出ていた。役者人生においてすごく大きかった」と話した。

当時の自分の状況について「がむしゃらに、中村獅童という名前を自分で大きくしよう、知ってもらおうという思いだった。それを思い出します。明日からまた頑張れそう」と感無量の表情になった。

若いころ、柄本明に、どうやったら芝居がうまくなるかと聞いたこともあったそう。「柄本さんは『下手でいいんじゃないですか。学芸会でいいんですよ』と。計算じゃない、純粋に楽しむことが大事だということだと思います。キャリアを重ねても純粋な気持ちを忘れちゃいけない。舞台でも映画でも、自分の芝居に満足したことは1回もない。理想を追い求めて、一生生きていくのかな」。

最近、長年の念願だった、ある監督の作品に出演が決まったそうで「その監督は、前の日に役者が考えて考えて持ってくる演技が嫌いだと思います。本番も1回で撮るとか。役を構築するのはもちろんですが、どう自然な姿を見せるか、自然にアプローチするか」と、キアロスタミ監督作品に通じるところを語った。