松本幸四郎(49)が17日、都内で、「三月大歌舞伎」(同3日~28日、東京・歌舞伎座)の第3部「石川五右衛門」の取材会に出席した。

大盗賊の五右衛門は、昨年11月に亡くなった叔父中村吉右衛門さんの当たり役。幸四郎は11年前、染五郎時代に初めてつとめた時、吉右衛門さんに指導を受けた。「気持ち、まずは心だと教わりました。さらにその気持ちを伝えるための技はとてつもないものを持っておられた。声の出し方など、細かく教えていただきました」と振り返った。

吉右衛門さんの最後の舞台は、昨年3月の「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」で石川五右衛門だった。来月、同じ五右衛門を演じることに、幸四郎は「『楼門-』が最後の舞台になってしまった。そこに思うところはある」とし「皆様に喜んでもらい、僕の叔父はすごいでしょ、と。僕の体を通して叔父を感じてもらえれば」と話した。

宙乗りもある。感染対策もあり、客席の上を飛ぶ宙乗り演出はしばらく行われず、歌舞伎座では今年1月に復活した。幸四郎にとっては約2年半ぶりの宙乗り。「高いところはまったくだめ。歩道橋も真ん中しか歩かない」と言うほどの高所恐怖症だが「気持ちの中では命がけでつとめたい。宙を歩いている飛び方なので、ファンタジーを楽しんでいただけるようにしたい」と語った。

「四月大歌舞伎」(同2~27日)では第2部「荒川の佐吉」で、侠客(きょうかく)の世界に生きる佐吉を演じる。染五郎時代、佐吉を演じる片岡仁左衛門と共演した。義理と人情、親代わりとなって子供を育てる情愛などが描かれる。幸四郎は「これだけ毎日泣いた芝居はなかった。それだけ芝居の世界に入り込んでいた」と振り返り「佐吉になりきりたい」と話した。