黒沢あすか(50)が5日、都内のユーロスペースで行われた主演映画「親密な他人」(中村真夕監督)の初日舞台あいさつで「3人の息子を育て、女であるということを、だんだん、だんだん忘れ去っていた時期のオファー…とても、うれしかった」と笑みを浮かべた。その上で「無意識ですが、遠くの方に押しやっていた、自分を、もう1回、クイクイっと自分を引っ張って役に近づいていった思い出があります」と、役作りについて語った。

黒沢は劇中で、この日、登壇した上村侑(19)演じる行方不明になった最愛の息子・心平の帰りを待つ、シングルマザーの恵を演じた。息子の消息を知っているという、神尾楓珠(23)演じる20歳の謎の青年雄二に電話で呼び出され、けげんに思いながらも、マンガ喫茶に寝泊まりしているという雄二を自宅に招き入れる。やがて親子のような、恋人のような不思議な関係になっていく役どころだ。

劇中には、黒沢が上村と神尾のヒゲをかみそりでそるシーンなど、互いに半裸状態になるシーンが複数ある。39歳で出演した11年の映画「冷たい熱帯魚」では、ぬれ場や血みどろになって遺体を処理するシーンも演じたが「『冷たい熱帯魚』で、やり切ってしまったので半裸でさえも、興味、面白みを感じなくなった。あえて、お母さん役を選んできた」とその後の女優人生で母親役を選択してきたと振り返った。

その上で「それは、それで自分の中が、しおれていくような不思議な感覚があった。自分は、どこを目指したらいいのか…」と、母親役を演じ続ける中で迷いもあったと吐露。そして「その中、真夕監督と会って、真夕さんの作品だったら、半裸でもいいと受け入れられた、素直な自分がいた。キラキラした目力のある若いおふたりを含め、私が絡むのは並々ならぬ思いで向き合わないと」と「親密な他人」に臨んだ思いを語った。

10代後半の上村、20代前半の神尾と、半裸状態で向き合って演じたことについては「私として、ドキドキしちゃった。自然と、やっぱり恥ずかしいなという気持ちが芽生えたのを覚えています」と照れ笑いを浮かべた。上村も「母親と子供、男と女とも違う…ちょっと不思議な空気。お互い、恥ずかしがっているけれど、それを割り切っている自分もいる、不思議な空気が画面から伝わっていれば、いいと思う。メチャクチャ緊張しました」と語った。中村監督も「ほぼ初めましてで半裸で対峙(たいじ)する感じ」と笑みを浮かべた。