コロナ禍で2年前、戦後初の6月入学式となったタカラジェンヌを育成する宝塚音楽学校108期生38人の卒業式が、当初の3日予定から11日遅れた14日、行われ、巣立った場所は講堂ではなく、初めて兵庫県宝塚市の宝塚バウホールからの旅立ちとなった。

来賓数を極力絞り、保護者の数を限定するなどして出席者を減らし、学校関係者全員が定期的にPCR検査を受けて備えてきた。式典では、昨年までと同様に、校歌斉唱を取りやめ、恒例だった予科生、本科生による「ブーケ渡し」も控え、感染対策を徹底した上での実施となった。

108期生は、新型コロナウイルスの感染拡大が一途だった20年3月、競争率21・3倍を突破し合格。ただ、4月の入学式は緊急事態宣言のため戦後初の延期となり、6月に宝塚大劇場ロビーで式典を行った。

同校では「卒業式だけは学び舎(まなびや)から送り出したい」との思いが強く、昨年の107期生までは感染対策を徹底した上で講堂での開催も、今年はそれもならず。108期生は入学も卒業も、宝塚歌劇団敷地内での行事となった。

臨時休校も経験し、夏休みの一部を削るなどし、予科、本科と2年に及ぶカリキュラムを消化。オンライン授業も座学や、ストレッチなど基礎の講義はできても「さすがに歌や日舞など踊り、芝居のオンラインは難しい」(同校)ため、自主レッスンも含めて、研さんしてきた。

修学旅行もかつては北海道だったが、県内1泊に変更されるなど、コロナ禍の中での2年の学び。卒業公演にあたる文化祭も、2月の開催予定だったが、劇団の上演休止などもあり、3月11~13日に延期されて終えたばかりだった。

卒業生38人の首席、岩永佳那子さん(東京都武蔵野市)は、娘役志望。コロナ禍での授業を振り返り「幸せな場所に存在できることをありがたく思い、時間を無駄にしないようお稽古に励むことが、感謝の気持ちを表すことだと思い過ごしてきました」と感謝した。

今年初めて卒業生を送り出す中西達也校長は、6月の入学式で始まった108期生へ向けて「当たり前と思っていた授業や行事が中止や変更になるなど、今までとは全く違う状況での学校生活」「不安な思いに駆られたことと思いますが、舞台人としての基本と教養を身に付けるべく精進を重ねてきたことに敬意を表したい」とねぎらい。学校生活の集大成となった文化祭も「ひとりひとりが生き生きと輝き、すばらしかった」とたたえた。

ただ、宝塚歌劇団の舞台へ向けては、やっと出発点に立ったばかり。「いよいよ厳しいプロの舞台の世界に羽ばたいていく」「宝塚の舞台を支える一員となれるようさらに精進するとともに、元気や希望、また夢と感動をお届けできる舞台人になっていただきたい」とエールを送った。

音楽学校の卒業生は通常、卒業式を午前に終え、同日午後に劇団で入団式に臨み、芸名を名乗るが、今年の入団式は後日になる。108期生は4月23日開幕の星組公演で初舞台、ラインダンスを披露する予定。