映画「ゴジラ」や、ミュージカルなどで知られる俳優宝田明(たからだ・あきら)さんが急逝したことが17日、分かった。1953年に芸能界入りして以来、さまざまな作品に出演した。今月10日には、映画「世の中にたえて桜のなかりせば」(三宅伸行監督、4月1日公開)の完成披露舞台あいさつに出席し、映画制作への飽くなき意欲を明かしていたばかりだった。

宝田明さん急逝、87歳 10日舞台あいさつに登壇も13日容体急変 映画「ゴジラ」など出演>>

4年前、宝田さんが銀幕で55年ぶりに歌い踊るというミュージカルコメディー映画「ダンスウィズミー」の撮影現場を取材した。当時、84歳。軽くターンして、パッと笑顔。華があり、チャーミングだった。「体の中にあるリズム」を大事にしていた。自然発生的に出るジャズ、スウィングがミュージカルを彩るのだ、と。

ミュージカルスターの草分け的存在だった宝田さんは、ミュージカルの話になると話題が尽きなかった。「アニーよ銃をとれ」「南太平洋」「風と共に去りぬ」「マイ・フェア・レディ」。次々に出演した名作を挙げ「ミュージカルは歌や踊りで物語を飛躍させるんです。リテークできないという難しさもやりがいもある」と魅力を語ってくれた。

宝田さんが引っ張ってきた日本のミュージカル界の興隆を喜びつつ、リズム感覚については「まだまだこれからでしょうね」と辛口エールを送ったことも印象的だ。共演者にアドバイスしたり、エキストラにも気さくに話しかけていた宝田さん。「現場は楽しく」と笑ったことも忘れない。【小林千穂】

◆宝田明(たからだ・あきら)1934年(昭9)4月29日生まれ。第6期東宝ニューフェイスとして、54年映画「かくて自由の鐘は鳴る」でデビュー。代表作は「ゴジラ」「青い山脈」など。音楽映画は「ロマンス娘」「太陽を抱け」など。64年舞台「アニーよ銃をとれ」で、ブロードウェーミュージカルに出演、以後「サウンド・オブ・ミュージック」「風と共に去りぬ」「マイ・フェア・レディ」など多くの名作に出演。66年、日本人初のミス・ユニバースである児島明子と結婚、84年に離婚。長女は歌手の児島未散。