日向坂46が3月30、31日に初の東京ドーム公演「3回目のひな誕祭」を開催した。千秋楽となった2日目公演終盤の「誰よりも高く跳べ!2020」でのキャプテン佐々木久美(26)のパフォーマンスに、グループの魅力の神髄を見たような気がした。

同曲はけやき坂46(ひらがなけやき)時代からのキラーチューン。佐々木久美の“アオり”は、ライブの定番だ。この日も「東京ドーム、行けんのか~!」と呼び掛け、大きな拍手を浴びた。そしてイントロで「プルーハー!」と巻き舌気味に叫んだ。

「プルーハー!」は、SMAPの名曲「SHAKE」(96年)の冒頭で木村拓哉(49)が披露していた定番のフレーズ。アイドル界の大先輩のオマージュで、会場をより一層、盛り上げた。ツイッターなどのSNSでも「プルーハーめちゃくちゃ興奮した」「他のライブでもやってほしい」などの声がファンからあがっていた。

16年5月にけやき坂46としてグループ活動をスタート。当初は欅坂46(現櫻坂46)の2軍的存在で露出も限られていたが、見る者を幸せにする「ハッピーオーラ」を武器に地道に人気を獲得していった。18年6月に「走り出す瞬間」でアルバムデビュー。19年2月に日向坂46に改名し同3月に「キュン」でシングルデビュー。バラエティーに多数出演し、NHK紅白歌合戦に3年連続で出場するなど、近年の活躍は特に目覚ましい。

ライブのリハーサル期間、日刊スポーツの取材に応じた佐々木久美は「おしとやかな『坂道』グループっていうイメージもあるとは思うんですけど、東京ドームですし、広いので、テンションを解放して、お祭り気分でいきたいです!」と意気込んでいた。同期の佐々木美玲(21)も「型にハマりすぎるんじゃなくて、フリーのパートはふざけたりして楽しみたいです」と話していた。

結成初期の頃は、乃木坂46、欅坂46(櫻坂46)に続く「坂道」シリーズ“第3のグループ”だった。だが「ハッピーオーラ」にはじまり、明るくはっちゃけたステージパフォーマンスやバラエティー番組などで見せる積極性は、唯一無二の個性となり、地位も存在感も確立してきた。「坂道」としてのアイドル性を備えた上で、行動や言動をセーブするのではなく、個性を“解放”させる機運は高まっていた。

けやき坂46時代から目標としてきた東京ドーム公演で、2日間計約10万人を動員。現時点での集大成とも言えるライブだった。渾身(こんしん)の「プルーハー!」には、節目ならではのスペシャル感や、さらに大きな一歩を踏み出す勇気など、さまざまな思いが込められていたのかもしれない。そこには確かに、日向坂46にしかできないステージがあった。【横山慧】