渡辺謙(62)が6日、都内で行われた、WOWOWと米ハリウッド大手HBO Maxの共同制作ドラマ「TOKYO VICE」記者会見に出席した。

席上で、世界で最もロケのハードルが高いと言われる、東京でのオールロケについて聞かれ「ロケが大事な文化だと行政にご理解いただき、ハードルを下げていただく。僕らもルールを守ることを地道に続けないといけない」と訴えた。

渡辺は劇中で、主演の米俳優アンセル・エルゴート(28)が演じた新人記者ジェイクと組んで危険なネタに踏み込む、ヤクザ絡みの事件を解決する敏腕刑事の片桐を演じた。加えて、ハリウッドで活躍する立場もあり、エグゼクティブプロデューサーとして、作品作りの根幹に深く関わった。

渡辺は、東京でのロケについて「まず、原則的に許可を取るのが非常に難しい」と口にした。自身が主演し、プロデューサーも務めた06年の映画「明日の記憶」のケースを引き合いに「新宿駅のコンコースや高速道路の許可を初めて、あの時、取った。海外はポリスがガードしてくれる。今回も、幾つか許可は取れたが非常に高いハードルを越えなければいけない」と振り返った。その上で「この作品が、ハードルを越える要因になると、うれしい」と語った。

東京でのロケに加え、コロナ禍というハードルもあった。渡辺は「5月くらいまで…コロナ禍の厳しい中、精魂込めて撮った作品。コロナ禍での撮影のプレッシャーは非常に強かった。僕らは替えがない…かかったら撮影が止まってしまう。気を付けましたし、撮影中は、誰とも会わなかったのが今作では非常に大きなハードル」と振り返った。

エグゼクティブプロデューサーの仕事について聞かれると、エルゴートらが口にする日本語のせりふの調整を行ったと説明。「各キャラクターに合った日本語訳のチェック。僕のシーンがなくても、夜中の3時にチェックしてくださいとメールが来て…自分の役作りと併せてやっていた」と語った。その上で「アンセルが、どんどん日本語がうまくなっていく。準備、リハーサルしていく中で、作品の流れを、もしかしたら壊すというシーンは『英語に戻そうよ』と話しながら、腹を割って日本語と英語を行ったり来たりして撮影をした。外国人と日本人が話す、すごくリアルなやりとりで(エルゴートも)今後、全部、日本語でやる可能性もあるくらい頑張った」と振り返った。

会見の最後に、渡辺は昨今の世界情勢も踏まえ「とにかく今、地球上で行われることが、あまりに悲惨なことが多いので、バイオレンスを描くことが難しいと思う。その中で人間が持つ過酷さ、つらさ、喜びが詰まった作品」と「TOKYO VICE」の作品性を評した。その上で「シリーズ、1本も見逃さず、キャラクターの裏にあるものをご覧いただければ、違うドラマとして受け止めてくれるんじゃないか」と胸を張った。