バイオリニスト川井郁子(54)が23日、東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールで「20周年 川井郁子 シンフォニックコンサート~越境するヴァイオリンミューズ~withオーケストラ響き~ひびき~」を開いた。

オーケストラに和楽器の笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、尺八、笛、琵琶、箏(こと)、鼓、和太鼓を融合させた演奏で観客を魅了した。また、バイオリンでは珍しい弾き振りにも初挑戦した。

コンサートは3部構成。第1部では00年のデビューアルバム「The Red Violin」から「Red Violin」や憧れの“タンゴの革命児”アストル・ピアソラの「エスクアロ」「リベルタンゴ」を披露した。

第2部でピンクに白いレースのあでやかなロングドレスに着替えた川井は「このドレスはウクライナで作られたものです。ウクライナはすてきなドレスも生み出す国なんです。買った所の方は『ウクライナに売れたよってメールします』と喜んでくれました」と笑顔を見せた。そして、ウクライナのヒマワリ畑の映像が美しい、1970年(昭45)公開のイタリア映画「ひまわり」のヘンリー・マンシーニ作曲のメインテーマ「ひまわり」を演奏した。他に映画音楽の「男はつらいよ」、自ら音楽を手掛けた13年の映画「北のカナリアたち」のメインテーマ「追憶の海」を披露した。

第3部では和楽器とオーケストラをバックに「ホワイトレジェンド~白鳥の湖より」、葛飾北斎の日本の風景の浮世絵を映し出しながら「展覧会の絵」を演奏した。

そして「信じられないことに今、戦争や紛争が世界中で起きています。子供を失った母親の気持ちに重ねて演奏します」と、娘の花音さんが書いた子供を失った母親の悲しみと怒りを描いた油絵を映し出しながら「リボーン」を弾いた。

最後に「夕べは一睡も出来ずに、今日はステージに立てるのかと思いました。でも、ここに来て皆さんに力をもらってやり切ることが出来ました。今までの20年を振り返ったことで、また新たに進んで行くことが出来ます」と話した。