女優坂ノ上茜(26)が映画「愛ちゃん物語ハート」(大野キャンディス真奈監督)で初主演を務めている。劇場公開予定がない自主制作映画だったが、複数の映画賞を受賞し、劇場公開が決定。このほど、坂ノ上がインタビューに応じ、初主演作の魅力や今後の目標を明かした。

来年公開予定の「ぬけろ、メビウス!!」が初主演映画になる予定だった。だが、3年前に撮影した「愛ちゃん-」が、急きょ初主演映画に。21年の「ぴあフィルムフェスティバル」ではエンタテインメント賞(ホリプロ賞)、映画ファン賞(ぴあニスト賞)をダブル受賞。他の映画祭でも絶賛された作品だ。

「この作品が自主制作で作った物だったので、『劇場公開したいよね』っていう目標はありましたけど、本当に実現するのか不透明なまま撮影しました。撮影から3年たった今、公開されて、あんまり初主演っていう実感はないし、公開されるという実感もなく。なんか実感としては、フワフワしている感じなんですよね。本当に何があるが分からないなって思いました(笑い)。でも、ラッキーでした」

映画は、毒親の父に過度に束縛され、自由を知らずに成長した16歳の愛ちゃん(坂ノ上)が、文化も生活も異なる聖子さんに出会い、一変する物語。劇中ではミュージカルのようなシーンもあり、歌声も披露。コロナ禍前の19年に撮了し、原宿の竹下通りでのゲリラ撮影も行ったという。

「最初に脚本を読んだ時、『個性爆発』というか(笑い)。オーディションで受かった作品でしたけど、自分のこれまでやってきた作品でもあまり近い物が正直なくて。『これ、どうなるんだろう』っていう感じでした(笑い)。これまでは割と地味な女の子の役が多かったので、明るい役ができてうれしかったですし、アドリブも多かったので、楽しかったですね。歌唱シーンは、音源を急に渡されて歌うことになって、劇場で流れると思うと恥ずかしいです(笑い)」

演じた愛ちゃんは、仕事人間であり毒親の父、鉄男に過度に束縛され、自由を知らずに成長した。坂ノ上はどんな環境で育ってきたのか。

「伸び伸びと育ててもらいました。基本的にやりたいことはやらせてもらえる家庭でしたね。この世界に興味を持って『入りたい』って思った時も、一言も反対もされず、むしろオーディションを見つけてくれたり、協力してくれましたね」

そんな坂ノ上が、唯一反対されたことがあるという。

「唯一『ダメ』って言われたのは、野球部に入ること(笑い)。父も兄も野球をやっていて、私もお兄ちゃんの影響で野球漫画とかを読んでいて。(漫画の)『メジャー』の涼子ちゃんがピッチャーでかっこよくて、『私も涼子ちゃんみたいになりたい!』って小学校4年生の時に、『野球部に入りたい』って言ったら、『それだけは日焼けするからダメ』って(笑い)。女の子の友達と『一緒に野球部入ろう』って言っていたんですけど、結局、その子だけ野球部に入っちゃって(笑い)。会うといまだに言われるので、『ごめんね』って言いますね(笑い)」

愛ちゃんは自由を知り、人生をより楽しく良い物にしようとする。坂ノ上自身が、人生を楽しむコツはあるのだろうか。

「毎日楽しいです! でも、そう思う心が大事だとも思っています。『もうこれだけしかない』じゃなくて、『まだこれだけある』と思ったり。なるべくポジティブにとらえようとは思っていますね。あとは人が好きなので、人といっぱい話す。今日もインタビューに来る前、お婆ちゃんに道を聞かれたので『一緒に行きましょー!』って、楽しいですし、心も豊かになりますよね」

09年に「アミューズ全国オーディション2009THE PUSH!マン」で俳優・ルックス部門賞を受賞し、芸能界入り。TBS系「王様のブランチ」のリポーターや、BS-TBS「町中華で飲ろうぜ」などのバラエティーで活躍する一方、女優としてもフジテレビ系ドラマ「監察医 朝顔」や、映画「きみの瞳が問いかけている」など、数々の話題作に出演。今年初主演映画が公開されたが、地元熊本への思いも年々増している。

「バラエティーでは、地元で番組をやりたいですね。ローカル番組で実家に帰りたいです(笑い)。熊本の人って、同郷愛が強いって私は思っているので、熊本の人に知ってもらって、『あの人熊本の人よ。頑張ってるね』みたいな感じで、知ってもらえたらうれしいですね」

女優としての今後の目標には、NHK大河ドラマへの出演を挙げた。

「和服を着て大河ドラマに出たいです。着物の着付けなどの勉強に行かせていただくことがあって。和服を着るときに、蝶々結びとかでも『あ、こっちだったんだ!』って知れたり。あと今、普通に開け閉めしているドアも、昔は着物の裾があってもたつくから、ふすまだったとか。いろいろ和服に合わせた生活様式だったというお話を聞かせていただくと、『あ、面白いな』って、思うんですよね。深いなって。興味もあるので、その和服を着て大河ドラマに出たいです!」【佐藤勝亮】

 

※タイトル「愛ちゃん物語」は末尾にハートマーク