俳優香川照之(56)が1日、一部で性加害を報じられたことを受け、TBS系「THE TIME,」(月~金曜午前5時20分)の金曜MCを降板した。トヨタ自動車など出演CMの放送見合わせや終了も相次ぎ、NHK会長も定例会見で苦言を呈する事態に発展した。先月26日には番組で謝罪したが、新たな疑惑が報道されたこともあり余波が広がっている。マルチに活躍する人気役者が厳しい状況に立たされている。

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TBSはこの日「金曜MCの香川照之さんは、今後、番組に出演しないことになりましたことをお知らせいたします」と報告。「『THE TIME,』は、さまざまなニュースをお伝えする情報番組として、視聴者の皆様に不信感や疑念を持たれることがあってはならないと考えており、所属事務所と協議したうえで、判断いたしました」と説明した。

先月24日、一部でホステスに対する過去の性加害疑惑が報じられた。同26日に同番組で香川が「私事でお騒がせをいたしまして、皆様にご迷惑、ご心配、ご心痛をおかけし誠に申し訳ございません。自らの行動をしっかりと深く反省し、自戒の念をきっちりともって日々を務めていきたい」と生謝罪したばかりだった。

しかし、今月1日発売の「週刊新潮」に、銀座のクラブでママの髪の毛をつかんでいるとする写真が掲載され、「週刊文春」には18年放送のTBS系ドラマの懇親会で女性スタッフの頭部を殴打したなどとする疑惑が報じられた。「不信感や疑念を持たれる」事案とあって、すばやい対応となった。「THE TIME,」代役には同局江藤愛アナウンサーが決まった。

先月26日の生謝罪時、香川は「いただける仕事に対しましては、しっかりと真摯(しんし)に真面目に一生懸命、全力でこれまで通り挑んでいきたい」としていたが、さらに厳しい目が向けられることとなった。

この日、NHK前田晃伸会長の定例会見が行われ、不定期放送のEテレ教養番組「香川照之の昆虫すごいぜ!」、総合「香川照之の昆虫すごいZ!」についても説明があった。同局担当者は「すでに番組の放送は終わっており、今後の放送について決まっているものはありません」とし、再放送予定も「ありません」と明言した。前田会長も一連の報道を受け「あってはならないことと考えています」と苦言を呈した。

トヨタ自動車はこの日、香川が編集長を務めていた自社メディア「トヨタイムズ」についてCM放送を見合わせ、年内で契約満了予定と明かした。ほか、CMに出演している複数の企業がサイトから、香川が出演するCM動画を削除したり、契約満了をもって更新しないことを発表した。

一方、出演中のテレビ朝日系ドラマ「六本木クラス」(木曜午後9時)は放送継続が発表された。関係者によると、香川の出演場面は撮影済みという。また10月期の在京キー局ドラマに出演が内定しているとの情報もある。11月18日には主演映画「宮松と山下」の公開が控える。TBS系ドラマ「半沢直樹」シリーズなどでブレークした日本屈指の役者が、強い逆風にさらされている。

◆香川照之(かがわ・てるゆき)1965年(昭40)12月7日、東京都生まれ。3代目市川猿之助(現猿翁)と浜木綿子の長男。東大文学部社会心理学科卒業後、芸能界入り。88年ドラマ「空き部屋」でデビュー。ドラマはNHK大河「春日局」「龍馬伝」、TBS系「半沢直樹」「99.9-刑事専門弁護士-」「MOZU」など。映画は「鬼が来た!」「トウキョウソナタ」「劔岳 点の記」など。12年に9代目市川中車を名乗り歌舞伎の世界へ。長男は歌舞伎俳優市川團子、いとこは市川猿之助。ボクシングに精通、テレビ解説も務めた。

■性加害の19年はテレビ、映画などで多忙

性加害があったとされるのは19年7月。同年はテレビ、映画、歌舞伎、CMと、多忙を極めた年だった。1月から「トヨタイムズ」の編集長としてCMなどに出演、5月にはTBS系「半沢直樹」の続編決定が発表された(放送は20年4月期)。NHK「昆虫すごいぜ!」で海外ロケを行い、映画「七つの会議」も公開された。12月にはテレビ東京系「最後のオンナ」に出演し、主演藤山直美とホームコメディーを繰り広げた。市川中車としては、4月に香川・金丸座、8月と12月に歌舞伎座、9月に京都南座に出演した。また21年10月からはTBS系「THE TIME,」金曜MCとしてさらに仕事の幅を広げた。

■香川照之経緯アラカルト■

▼8月24日 ニュースサイト「デイリー新潮」などで、19年7月にあったとされる銀座のクラブでの性加害疑惑が報道。ホステスの服の中に手を入れ胸をもんだりキスをするなどし、女性がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患ったなどと報じられた。

▼同25日 所属事務所が報道を事実と認め、謝罪文書発表。被害女性は香川の謝罪を受け入れていることも明かした。

▼同26日 「THE TIME,」で香川が生謝罪。トヨタ自動車広報部が報道について「社会的に許されざる行為であり、大変残念。今後を注視させていただきたい」とコメント。

▼9月1日 「週刊新潮」で女性の髪をつかんでいる写真などが、「週刊文春」では女性への殴打疑惑や周囲へのパワハラ疑惑などが報道。「THE TIME,」降板などが発表。

■歌舞伎では市川中車「新・三国志」で張飛■

○…香川は歌舞伎俳優・市川中車としても活躍している。歌舞伎の舞台に立ったのは今年は「三月大歌舞伎」の「新・三国志」で、張飛を演じた。「七月大歌舞伎」の「風の谷のナウシカ」では声のみの出演だった。9代目中車を襲名して10年目に突入した昨年、取材会で「(初舞台で)俺は生きていると初めて思った。その実感は今でも変わっていない」と、熱意を持って語っていた。