歌手加山雄三(85)が9日、東京国際フォーラムホールAで、62年の歌手活動で最後となるホールコンサート「ラストショー~永遠の若大将~」を行った。今年6月、高齢と体調などを考慮して、年内でコンサート活動を終了すると発表していた。
オープニング映像では、子ども時代から最近までの映像を駆け足で流した。
1曲目は「海 その愛」。ステージ中央に置いたイスに座り、ピンのスポットライトを浴びながら自慢の声を張り上げた。「皆さん、今日はよろしくお願いします」。この第一声に会場の約5000人から割れんばかりの大きな拍手が送られた。この日は、フォーラムのほか、全国47都道府県の62カ所の約1万3000人がライブビューイングで視聴した。
「本当にありがとうございます。皆さんに会いたくて、今日という日を楽しみにしていました。(全国の)映画館で中継を見てくれている人もいる。人の幸せは自由度にある。人は自由に感じる時間が多いと幸せなんだって。僕は海っぺりで自由に奔放に育った。海には自由がある。だから僕は海が好きなんだ。1部では海の歌をたくさん歌いたい」。その後に「ある日渚に」「夜空を仰いで」と続けて歌唱した。
「最近、リハビリを兼ねてよく散歩をしている。子供たちが遊んでいるのを見かけると、自分の子どものころを思い出すんだ。何もなかった。喫茶店もパチンコもない。生きている貝をたくさん拾ったらイシハマグリっていうんだって。『そんなもの食べられるか』とおふくろに怒られたよ。でも鍋に貝の身を入れてしょうゆとみりんを入れてつくだ煮を作った。そうしたら、おふくろもおやじも『うまい』と言って食べてくれた。本当にそういう時代を生きてきた。自分で取って食べられたらうれしい。海は俺に幸せを与えてくれたよ」。
その後に「俺は海の子」「湘南ひき潮」「まだ見ぬ恋人」「君のために」と続けた。
鳴りやまぬ拍手には「ありがたいね。拍手っていいもんだね」と笑顔で話して「名曲をたくさん作っているんだよね。僕の作った歌をクラシックで歌ったら、指揮者が『いい曲ですね』と言ってくれたことがある」と紹介をした後で歌ったのが「ひとり渚で」だった。
1部の最後を飾ったのが「光進丸」。イントロが鳴ると客席から自然と手拍子が沸き起こった。それに乗って、加山は気持ちよさそうに歌唱。最後にはイスから立ち上がって小さくガッツポーズをしてみせた。
休憩をはさみ、2部はAIの“バーチャル若大将“による「そして陽は昇りつづける」の歌唱でスタートした。次の「旅人よ」は「おれ、いらねえんじゃねえかな~」と言いながら登場した加山とのデュエットだった。
「昔から新しいことがすごく好きで、誰もやっていないことをやるのが好きだった。バーチャル若大将は面白いね」と話して「この間、家の戸棚を開けたら古いテープが落っこってきた。すすごくたくさんある。詞がついていないから、詞を付けてレコーディングをしたい。楽しみにしてほしい。エレキやギター、ピアノで音が取ってあるから、音が残っているんだ」とコンサートは終了しても音楽活動は続けていくと明かした。
「さぁ、盛り上がる準備はいいかな」と呼び掛けて歌唱したのが「蒼い星くず」だ。
「歌っていると思い出す。いろんなことをやってきたからね。(ライブビューイングで)中継を見ている人もよろしくお願いしますね。アルプスの麓まで行って作った歌を歌います」と曲紹介をして「ブライトホーン」を歌唱した。
その後には「いろいろと嫌なことがあるけど、たまには音楽を聞いて、心の糧として生き延びていこうよ。分かっているね」と語って「明日に架ける橋」を英語で歌唱した。歌唱後は満面の笑みで「ありがとうございます」。
この日は、妻の美恵子さん(元女優の松本めぐみ、75)が客席から見守った。「9月4日が結婚記念日。こんないい結婚はない。4人の子どもに恵まれて4人の孫がいる。みんないい子に育った。元気で何よりも幸せ。その元を作ってくれたお母ちゃんに心を込めて歌を歌いたい」と紹介をして「September 4th」を歌唱。「(妻への)感謝の言葉は山ほどあるんです。1つ1つは言えないけれど、よくぞ子どもを育ててくれてありがとう。共に乗り越えてくれた。心から感謝感謝です。結婚式場の隣にチャペルがあって。そこにピアノがあって生まれた曲。ワルツです。ワルツって愛を伝えるんだって、音楽を愛してきて良かった。音楽を親友にしてきて良かった」。
「この曲があったから、今のぼくがあるという曲がある。岩谷時子さんが作詞してくれた曲。聞いてください」と紹介した曲は「恋は紅いバラ」。「夜空の星」は大きな手拍子に乗って歌唱した。
その後はイスから立ち勝手何度も手を振り。頭を下げた。
アンコールでは「ありがとう。それじゃこの曲をいってみよう」の言葉に続けて「お嫁においで」を歌唱。「サライ」も続けた。大拍手を受けながら「今日はありがとうございました。皆さんからたくさんの幸せをいただきました。本当にありがとうございました」。ガッツポーズを見せ、両手を何度も振りって感謝した。
そしてダブルアンコール。「愛する時は今」を歌唱。
「ありがとうございます。今日はたくさんの幸せをいただきました。本当にありがとう。幸せを感じる心を大切にしている。最後まで皆さんの応援があったから歌いきることができた。幸せいっぱいです」と語って「愛する時は今」をラストに歌唱。600超人の歌唱曲から選んだ26曲を約2時間半で歌いきった。
加山は19年に腰の圧迫骨折や脳梗塞、20年には誤嚥(ごえん)から脳内出血を発症するなどしたが懸命なリハビリで復帰した。今でも新曲制作に精を出すなど音楽への情熱は尽きないが、ケジメをつけることにした。
12月に名誉船長を務める豪華客船「飛鳥2」の船上ライブを行い、コンサート活動を完全に終了する。
◆加山雄三(かやま・ゆうぞう)本名・池端直亮。1937年(昭12)4月11日、神奈川県生まれ。慶大を卒業した60年に東宝入社。同年に映画「男対男」で俳優デビュー。61年に「夜の太陽」で歌手デビュー。同年から映画「若大将」シリーズで人気スターとなり、黒沢明や岡本喜八ら巨匠の作品にも多数出演。歌手としてNHK紅白歌合戦に17回出場。14年に旭日小綬章、21年に文化功労者に選出された。父は俳優上原謙、母は女優小桜葉子。曽祖父に明治の元勲・岩倉具視がいる。妻は元女優松本めぐみ。
<加山雄三の主な歌手活動>
▼51年 14歳で「夜空の星」で初の作曲
▼57年 慶大法学部在学中に、6人編成のバンド「カントリー・クロップス」を結成。サイドギターとボーカルを担当
▼61年7月 「夜の太陽」で歌手デビュー
▼65年 「君といつまでも」が350万超の大ヒット。レコード大賞特別賞
▼66年 「君といつまでも」でNHK紅白歌合戦に初出場
▼67年 日本人アーティストとして初の武道館公演
▼92年 日本テレビ系「24時間テレビ」のテーマソング「サライ」を作曲
▼94年 ハワイの「第15回 祭りインハワイ」に参加しコンサートを開催
▼05年 米国のカーネギーホールで公演
▼14年 日本武道館で最高齢(当時77歳)ワンマンライブを開催
※弾厚作のペンネームで作詞作曲も行い、紅白歌合戦には10年までに17回出場



