昨年9月に84歳で亡くなった劇画家さいとう・たかをさんの「お別れの会」が29日、東京・帝国ホテルで行われた。

漫画家の里中満智子さん(74)が弔辞を述べた。

分業制の業界の先駆けとなったプロダクションシステムの構築を「先生は『世の中には自分より絵の上手な人がたくさんいる』『それぞれ自分より上手な人の才能を生かしたい』とおっしゃっていた」とたたえた。「80歳を過ぎたころ『もう自分で書いていないんじゃないか』ということを言われていましたが、手のひらを見せていただいた時に針を埋め込んだような線が入っていて…。その年齢でも漫画に手をいれていたんです。やるべきことから逃げない強さを学びました」と尊敬の念を明かした。

若かりしころの思い出もあった。「輝子夫人と出会ったころから、おのろけの話を聞くことも多かった。『今の妻と出会って、この人は男でも結婚したい。人生の奇跡だ』とおっしゃっていました」とプライベートな“コイバナ”にも触れた。

祭壇は白を基調とした花で彩られ、「ゴルゴ13」の単行本約80冊も並べられた。祭壇脇には「ゴルゴ13」「鬼平犯科帳」などの劇画も飾られた。

◆さいとう・たかを(本名・齊藤隆夫)1936年(昭11)11月3日、和歌山県生まれ。代表作に「鬼平犯科帳」「仕掛人藤枝梅安」など。「ゴルゴ13」で75年に第21回小学館漫画賞、02年に第31回日本漫画家協会賞・大賞を受賞。03年に紫綬褒章受章。04年に再び「ゴルゴ13」で第50回小学館漫画賞審査委員特別賞受賞。10年に旭日小綬章受章。19年には名誉都民。同年に第23回手塚治虫文化賞特別賞を受賞。21年に正六位受位。22年度の第51回日本漫画家協会賞・文部科学大臣賞受賞。