作家三島由紀夫、石原慎太郎氏らが愛した舞台が、50年ぶりに歌物語「人魚姫~Fifty years later~」として、当時のキャストのままよみがえる。今月21、22日に東京・東高円寺のロサンゼルスクラブで、人魚姫がフラワー・メグ(70)、王子が川端愼二(74)という当時と同じキャスティングで上演される。

フラワー・メグは19歳で、日本の暗黒舞踏創始者である土方巽の弟子の石井満隆に東京・吉祥寺のジャズ喫茶でスカウトされた。東京赤坂のクラブ「スペース・カプセル」でアンダーグランドショーに出演。裸身を惜しみなくさらし、石井と金粉ショーを展開した。高度経済成長、70年安保、サイケデリックのムーブメントが押し寄せる中、当時の進歩的な文化人に大きな支持を受けた。

アンデルセン童話の人魚姫は、王子との恋がかなわず海の泡となって消えた。フラワー・メグも活動期間1年で姿を消した。“テレビで初めて上半身ヌードを披露した女性”という逸話だけを残し、20歳で結婚して家庭に入り2男1女に恵まれた。だが、20年前に離婚、15年前に仕事を再開した。川端は現在、三島らが結成した劇団NLTを代表として率いている。

メグは「50年前には一糸まとわずにステージに上がって、真っ暗な中でストロボを点滅させてヌードを浮き上がらせた。今回はどうしようかしらね」と70代とは思えぬ妖艶な笑みを浮かべる。今回、演出も担当する川端は「人魚姫と王子が、50年後に再会した物語を、今回は描いています。まさか、50年以上もたって、またこんなことが出来るとは思わなかった」と話している。

メグは「自由に、くよくよしない、悩まない、考えないで、いいかげんにやって来たから、今でも好きにやっていけるんじゃないかしら」。川端は「50年前から変わっていない、自然体。本当にきれいだったから、結婚して引退したときはショックだった。今のところキスシーンはないんだけど、50年前の唇の感触は今も覚えている。僕が演出だから、どうしようかな」と笑っている。

他に槻城耀羅(つきしろ・あきら)と諸藤佳子が出演する。