2013年に75歳で亡くなった「北斗の拳」のラオウ役や「Dr.スランプ アラレちゃん」の則巻千兵衛役などで知られる声優、内海賢二さんの半生などを描いた映画「その声のあなたへ」(榊原有佑監督・脚本)の特別上映会が27日に愛知・東海市立文化センターで行われ、内海さんの妻で声優の野村道子(84)、息子の賢太郎さん、榊原監督が思い出などを語った。

野村は旦那である内海さんについて「同じ声優から見ても、努力の仕方が全然違うんです」とし「舞台をやる時はトイレまで台本を持ち込んで、私は全く努力というものをしない女なので、正反対だったなという風に思います(笑い)」と笑いを誘った。

続けて「努力も、忍耐強さというのもすごいですし、人への気の遣い方、全部ひっくるめて内海賢二ってすごいなと思っていました」とその人柄を語り「夫としては私の言うことは何でも聞くという、非常に扱いやすい夫でした(笑い)」と振り返った。

今は内海さんの後を継いで賢プロダクションの代表取締役を務める賢太郎さんも同意し「自分の表現以外にも、周りに気配りをできるということも含めて、現場にいるだけで雰囲気も明るくなり、ディレクターからも『内海さんがいることで、難しい現場だったり難しい共演者もすごく和やかになったし、とても感謝しています』ということを多々言われました」と明かした。

内海さんを知る声優と顔を合わせた際には『お前が賢太郎か! 内海さんから聞いてたぞ。内海さんに世話になったから、面倒見てやるから』と多く声をかけられたとも語り「たくさんの人に言われたので、とても感謝しています」と思いを込めた。

上映会は、榊原監督が東海市のふるさと大使を務めており、同市内に映画館がないことなどから実現。午前と午後の2度に分けて実施し、3人がそれぞれの上映前にトークを行った。

市内の若者や挑戦する人たちへ向けたエールも送られ、野村は「その時その時にはやりというのがありますが、私は70、80歳になってもちゃんと『俳優』として生きていけるように育てたいなと思っています。声優も俳優ですから、芯にしっかり『俳優になろう』という気持ちを持っている方は頑張れるなという風に思います」と語った。

賢太郎さんは声優を目指す若者へ向け「声優を一瞬でも本気でやりたいと思ったら、期限を決めて一生懸命やってみて、なれる人はなれるだろうし、なれない人はなれないだろうと思います」としつつ「この映画にあるようにどういう人が声優になっているかというと、『声の表現』という部分でもあるんですけど、やっぱり人間性なのかなと思いますね。人としての魅力という部分で、いろいろな経験をしながら将来的に夢に近づくことになるんじゃないかなと思います」とエールを送った。

地元に凱旋(がいせん)する形にもなった榊原監督は「この『その声のあなたへ』もそうでしたし、今後も自分自身、しっかりとチャレンジをして、良い作品を作って皆さんの目標となれるように、東海市出身の映画監督としてこれからも頑張っていきたいと思います。一緒に頑張りましょう」と呼びかけていた。