渡辺哲(72)が4日、東京・ユーロスペースで行われた映画「茶飲友達」(外山文治監督)初日舞台あいさつに登壇。

劇中で高齢者売春クラブを利用する男性客を演じており、コールガールを演じた磯西真喜(60)とベッドインしたシーンを振り返り「温かかった…クセになる」と振り返った。一方、外山文治監督(42)は、高齢者の性の問題に踏み込んだことについて触れ「衝撃作だよな、とシンプルに思う。でも、センセーショナルなものだけでない。中身のあるものを作った思いはある」と胸を張った。

「茶飲友達」は、2013年(平25)年10月に、会員男性1000人、女性350人(会員の平均年齢は60歳前後で、最高齢は男性88歳、女性82歳)で男性経営者も70歳という、高齢者売春クラブが警視庁に摘発された実際の事件を元に、外山文治監督(42)が着想。主演の岡本玲(31)演じる高齢者専門の売春クラブ「茶飲友達(ティー・フレンド)」代表の佐々木マナや海沼未羽(22)演じる朝倉千佳ら運営側を若い世代に置き換え、高齢化社会と低賃金などで行き場のない若い世代という、日本社会の2つの課題を描いた。

渡辺は、妻に先立たれて孤独な中、新聞の三行広告に小さく書かれた「茶飲友達、募集」の文字にひかれ「茶飲友達(ティー・フレンド)」を利用するようになった時岡茂雄を演じた。生活苦などで「茶飲友達」で仕事を始めた、磯西演じる松子を自宅に呼び、ベッドインするシーンが描かれる。

当該シーンを振り返り、渡辺は「磯西さんが温かかったです。撮影は寒かった…。(磯西は)温かかった。この作品に参加して良かった」と振り返った。磯西が「あのシーンは、私も不安で。映画に挑むファーストシーンが、あのシーン。(渡辺が)支度部屋から話して、ほぐしてくださった。寒い、寒いって入ったら温かくて…同じ気持ち」と返すと、渡辺は「クセになる」と笑みを浮かべた。

渡辺はトークの中で「あなた、どうなさいます?」と客席に呼びかけた。その上で「初日の台本の1ページ目のファーストシーンから撮った。(撮影を)終わった時、この人、これから、どう生きていくんだろうと思った」と、演じた時雄に思いをはせた。そして「誰でも幸せになりたいんだけど、1人じゃ幸せになれない。みんなで、作っていかなきゃならないんだけど(物語の中では)失敗したもんな?」と右隣の岡本に呼びかけた。

その上で「終わった時、どうやったら幸せになるのか考えた。僕くらいの年になると考える…幸せは何だろう? と。なるべく自分の心の状況の中に、生まれることがあるだろうから、私はこれかな? と考えてくれたら、うれしい」と客席に訴えた。

外山監督は「あのおじいちゃんは今後、どうなるんだろう? と考えてみていただきたい、というのが映画の終着点でもあり、私の出発点」と、渡辺が演じた時雄という役の重要性を強調。その上で「高齢者売春クラブ…その部分だけ見ると、どういう映画だと思うかも知れないけれど、描かれていることを1つ1つひもとくと、これが日本社会だと思っていただける作品だと思う。東京…1館しかやっていない。世の中に大切なものを込めた映画が、広がっていくのは皆さんにかかっている」と客席に拡散を呼びかけた。