吉永小百合(78)が15日、都内で行われた123本目の出演映画となる主演作「こんにちは、母さん」(山田洋次監督、9月1日公開)完成報告会見で、劇中で“おばあちゃん”を演じた思いを語った。

「こんにちは、母さん」は、日本を代表する劇作家、演出家で劇団「二兎社」を主宰する永井愛氏の、同名の人気戯曲が原作。妻から離婚を迫られ、人生に悩む会社人間の息子が2年ぶりに実家に帰ると、母が恋人らしき存在がいるなど生き生きしており、自分の人生を生き直そうと共同生活する物語。01年と04年に東京・新国立劇場で上演されると、07年にはNHKでドラマ化。舞台、ドラマともに、加藤治子さんと平田満が母子を演じた。吉永は劇中で74歳の母・神崎福江、47歳の息子・昭夫を大泉洋(49)が演じた。

吉永は、この日、イメージを一新した、ショートカットで登壇。「私の役は、職人の夫に先立たれ1人、隅田川のほとりで足袋屋をやっています。息子も離れて寂しいんですが、ホームレスの炊き出しなど、ボランティア活動を頑張ってやっていて、恋もします」と役どころについて語った。

続いて、今作が90本目の監督作となる、山田洋次監督(91)が「初めて、この戯曲を見たのは、もう20年も前。評判になったし、僕も映画に出来ないかと永井さんに話して、何回も相談したけれど、うまくまとまらなかった。一番の原因は主役を誰にするか…のキャスティング」と、キャスティングがネックになり、映画化にこぎ着けなかったと振り返った。

それが、21年になり「気付いたのは、年齢から言うと、小百合さんも、おばあちゃんになっても、おかしくない。僕ら世代のミューズ…おばあちゃんにしていいのかと思ったら、事もなげに『もちろんですよ』とおっしゃって、やろうと企画が始まった」と吉永に打診した経緯を語った。

吉永は、山田監督の話を受けて「ある日、監督に『おばあさんは、どうですか?』と言われ『もちろんですよ』と言いましたけど、私ね、早まったかな、と…」と、オファーを即答したものの、その後、おばあちゃん役を受けたことについて、思うところがあったと振り返った。そして「私の周りは、おばあちゃんになってきている。たまたま私に、子どもがいなかったら、そう(おばあちゃんの年代)なんだと言い聞かせた」と当時の心中を明かした。

そして、息子を演じた大泉と、孫の神崎舞を演じた、永野芽郁(23)に撮影中、救われた面が多かったと感謝した。吉永は「舞ちゃん(永野)の演技は、いろいろ見ているんですけど、一緒にやって、とても幸せ…おばあちゃんになって、良かった」と感謝した。大泉に対しても「ぎくしゃくして、こうやってくださいと監督に言っていただいても、うまく出来なくて…ダメだなと思ったんですけど、大泉さんに支えられ、撮り切れた」と感謝した。一方で「いろいろな面の衰えも、残念なこともたくさんあるんですけど、今回の映画をやらせていただいて、本当に良かった」とも語った。

劇中で、恋をするシーンもある。吉永は「今までは、男の方から思われるシーンがあった。今回は自分の方から恋心を持って接する役…難しいけれど、今、思うと楽しかった。いかがですか?」と、隣に座っていた寺尾聰(75)に呼びかけた。寺尾は劇中で、牧師の荻生直文を演じるが「そういう本(台本)だったので毎日、一生懸命やった。普段の自分から懸け離れた、純粋な男だったので、やりやすかった」と振り返った。

永野は「一緒にキュンキュンし、かわいらしい方。恋っていいなと思った」と、恋する吉永のシーンを笑顔で評した。