英国のヘンリー王子(38)が米国移住に際して申請したビザを巡り、申請内容を公開するよう求められていた米国土安全保障省(DHS)が、13日に行われた裁判で公開を公式に拒否したことが分かった。米ニューヨーク・ポスト紙や英メディアが伝えている。今年1月に出版した回顧録「スペア」の中で王子が過去にコカインやマジックマッシュルームなど違法薬物を使用したと告白したことを受け、米保守系シンクタンクのヘリテージ財団が、薬物使用歴について正直に申告していたかどうか確認する必要があるとして米政府に対して王子のビザ申請の内容を公開するよう求めていた。

2020年に英王室を離脱して家族と共に米国に移住した王子はどのようなビザを取得して米国に滞在しているのかは不明だが、米国の移民法ではビザ申請者に対して過去の薬物使用を理由に入国管理官が申請を退けることが可能で、ビザ申請書には薬物に関する質問事項もある。そのため、移住を希望する非米国人が薬物使用を認めることは、ビザ申請に際して大きなハードルとなる可能性があり、王子を入国拒否すべきだったとの声も上がっていた。

報道によると、DHSは書簡の中で「記録が存在する限り、当局は対象者のプライバシー上の利益を無効にするほどの公共の利益が開示にあるとは認められない」と理由を説明しているという。

ヘリテージ財団マーガレット・サッチャー自由センター所長のナイル・ガーディナー氏は、DHSの対応について「バイデン政権の驚くべき透明性の欠如を示している」と批判。「容認はできない」「彼らの立場に異議を唱える」とし、情報が公開されるまで法廷で闘い続ける意向を明かし、控訴する方針を示した。(ロサンゼルス=千歳香奈子)