5月31日に新曲「四季花鳥」でデビューした民謡歌手竹野留里(23)が3日、七夕を前に、都内で、願いをこめた短冊をササの葉に飾り付けた。着物姿で「大きな劇場で歌いたい」「レコード大賞で最優秀新人賞をもらいたい」「紅白歌合戦に出場したい」など、16の願いを短冊にしたためた。

4歳から民謡を始め、さまざまな大会で入賞。民謡日本一の称号をいくつも獲得した。高校時代にはテレビのカラオケ番組に出場。テレビ東京「THEカラオケ★バトル」ではU-18四天王として活躍。抜群の歌唱力は芸能界でも話題となり、大学卒業後の昨春、大手芸能事務所ホリプロと契約。満を持して民謡歌手として「四季花鳥」でデビューした。

「憧れの歌手は和田アキ子さん。パワフルな歌声、カッコよさに憧れています。民謡をやってきたので、高音のロングトーンには自信があります。民謡は練習の時にマイクを使わないので、部屋いっぱいに自分の音を響かせる、すごく空気を一変させられる力があると思っています」。

中3の時、出身地の北海道室蘭市で撮影された映画「モルエラニの霧の中」で、地元から起用されるキャストで準主役を務めた。「香川京子さんとか小松政夫さん、亡くなった大杉漣さんや大塚寧々さんが出演されていました。そんな中でお芝居ができて楽しかったのですが、坂本長利さんと共演するシーンで、その目力のすごさに圧倒されてしまいました。学芸会の舞台だったら客席も遠いけど、カメラはすぐそばにあって。表現したいなって思っているのに、何もできず、後悔っていうか、達成できなかった記憶が強く残りました。ど素人の学校の学芸会しかやったことなかったんですが、民謡ではそこそこの成績を残していたので、挫折感だけが強く残りました」。 

民謡歌手に女優。どちらも、プロとして食べていくにはハードルは高い。竹野は高校卒業後、作業療法士を目指し札幌医大に進学した。「学生だったので、芸能界に行くのは難しいのかなって思って。それなら、好きな音楽を使った仕事がしたいと。そんな時に、音楽療法っていう仕事を見つけて。ただ、国家資格ではないので、それだけじゃ食べていくのが難しいので、それに一番近い、作業療法士を選びました。作業療法のプログラムの中で音楽療法を選択することができるっていうのを知りました」。現在も週3日は、病院で作業療法士として働いている。「認知症で記憶力が衰えてる患者さんで、次の日には一緒にいるスタッフの名前すら忘れてしまうのに、私が民謡を歌ったら、あなたの歌、すごく良かったわよって、1週間くらい、私の名前を覚えてくださりました」。

高校時代のカラオケ大会出場でのどを酷使したこともあり、いわゆる声帯ポリープができてしまった。歌手の職業病でもある。「民謡歌手だけなら、かすれ声も味にはなったのですが、やはりミュージカルでも活躍できるようになりたい」との思いから、今春、デビュー前に、声帯結節を除去する手術を受けた。「13万円ほどかかりました。一括で払わねばならないので、大変でした」と振り返る。手術は成功。「おかげさまで、本当に歌いたい曲を歌いたいように歌えるようになりました。今回、CDのリリースイベントを、北海道と東京でやったんですけど、ファンの方が、声が伸びやかになったねって言ってくださって。聴いてくださる方が、わかってくださったのがうれしいですね」。

民謡を歌ってきたことから、着物も自身で着付けできる。中1の時に、きもの装いコンテストで北海道代表となり、東京・NHKホールで開催された世界大会に出場した。「NHKホールには立たせていただいたのですが、次は、歌手として紅白歌合戦に出場したいです」。

民謡歌手にミュージカル女優、そして作業療法士。竹野は三刀流で突き進む。【竹村章】