今月、フジテレビ系連続ドラマ「この素晴らしき世界」(木曜午後10時)の主演を務めている女優若村麻由美(56)を取材する機会に恵まれた。当然、主演ドラマについて深掘りするのだが、その狙いとは別に、どうしても聞きたいことがあった。若村は20年前の03年に一世を風靡(ふうび)した同局系「白い巨塔」に出演。主人公の財前五郎(唐沢寿明)の妻杏子役を好演していた。

若村にとっては杏子は難しい役柄だったという。「割とそれまで主演もしくは、相手役みたいな立場をやらせていただいていました。なので、本当に連続ドラマの中で時々出る役っていうのをやらせていただいた最初なんですね。だから、実はものすごく難しかったんです」。

とはいえ、財前に愛人がいるのを知りながらも、気丈に振る舞う杏子の姿が印象に残っている。「描かれることがその部分しかないっていう役を、どうやってちゃんとその役目を果たして、演じられるだろうかっていうことが初体験だったっていうのもあって。それはすごく難しかった。でも、そういう役どころを開いてくれた作品でもあります」と当時を振り返る。

自分が一番印象に残っているシーンを、本人にお伝えすることができた。財前が病に倒れて入院し、財前の愛人、花森ケイ子(黒木瞳)が見舞いに来た際、杏子は「どうぞ、ごゆっくり」と言って、花瓶の花を抜いて病室を譲ったシーンだ。今でも忘れられない。

そのことをあまりにも力を入れて聞きすぎたため、「『白い巨塔』のことを書きたいんですか」と、本題から逸脱していることをヤンワリと笑顔で指摘された。それでも懲りずに聞くと、「白い巨塔」で共演した唐沢や里見脩二役の江口洋介のことについても語ってくれた。

2人とは、89年のNHK大河ドラマ「春日局」での共演仲間だった。「2人とも大河ドラマが初めてで、一緒に大河をやった仲間だったんです。若い頃に一緒にやっていた仲間2人がやるんだと思って、そこ(白い巨塔)に参加させてもらえるっていうのは、それはありがたいこと。喜んでやらせていただきました」。

もっと「白い巨塔」出演時のことについて聞きたかったがタイムアップ。個別取材の時間は終わった。

「白い巨塔」のことについて、しつこく聞きすぎたかなと反省して迎えた数日後、取材日とは別の日に設定された写真撮影日で若村と再び会うことができた。そこで若村から「白い巨塔の記者さん!?」と柔らかみのある笑顔で呼ばれて、ホッとした。そんな若村の人柄に感動した。【高橋洋平】